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INTO THE BLUE

Kid`s Diary 旅行

2005年01月04日

史上最悪?苦難の旅・飛鳥オセアニアグランドクルーズ

2005年目に入ってからの、海友最初の冒険は、ダイビングディスティネーションではなく、なんと、豪華客船「飛鳥」のオセアニアグランドクルーズへの乗船だった。

 2005年目に入ってからの、海友最初の冒険は、ダイビングディスティネーションではなく、なんと、豪華客船「飛鳥」のオセアニアグランドクルーズへの乗船だった。以前、僕と妻のミナは、このオセアニアグランドクルーズに、講師として乗船した経験があった。それは2002年、飛鳥がマーシャル諸島共和国の首都、マジュロに初寄港した年のことだ。飛鳥では、寄港する国や港などがある場合、そこを紹介する講師を招いてゲストの前で寄港地紹介するのが慣わしになっている。そこで、僕たち夫婦がその適任者(?)として乗船したのだ。
本来はその地で行われる各種ツアーを担当する旅行社の人が行うことが多いらしい。マーシャルに対する知識や経験がある人は、当然もっと沢山いて、果たして僕たちが適任者かどうかは定かではないのだが、面接を行って、二人で乗船すればきっとゲスト受けもよいだろうという飛鳥側の担当者の判断もあり、乗船が決定した。
それで評判が多分良かったのだろうか。2005年2月、再度マーシャルに寄港するに当たって、また僕たちを寄港地紹介の担当者として乗船して欲しいという申し出があった。これには、マーシャルで飛鳥寄港の現地オペレーションを担当していたマーシャルズ・ダイブ・アドベンチャーズのオーナーガイド、吉居智君の推薦が大きかったのだが。しかし、僕たちにはすでに海友がいて、きっとゲストに迷惑をかけるからと辞退しようとしたのだが、平均年齢70歳以上というゲストに対しては、1歳4ヶ月の赤ちゃんが乗船しているのは、結構よい刺激になるかもしれないということになった。
ということで、この年のオセアニアグランドクルーズの全行程中、ニュージーランドのオークランドから乗船して、トンガのトンガタプ、マーシャルのマジュロを経由して日本の横浜までの約2週間、飛鳥に乗船することが決定した。当初、不安はあるものの、またまた海友を新たな冒険にチャレンジさせられるという期待感もあった。しかし実際には、僕たち家族にとって史上最悪の苦難に満ちた旅になってしまった。
 期待とともに、ニュージーランドから飛鳥に乗船。最初の頃は「かわいい、かわいい」、「老人ばっかでしょ、刺激がなくって、もうこんな小さい赤ちゃんが乗ってるだけで幸せになるわ~」と言ってもらったり、膝を着いて手を合わせて拝まれたりまでして、どこに行っても年配のゲストの人たちにもてはやされていた。二人して、これならなんとか長旅を乗り切れるかなと思っていた矢先事件は起きた。
乗船して2~3度目くらいのディナーの時の事、この日はフォーマルデイということで、食事の時にそれなりの正装をしなければいけない日だった。僕たちも海友も、それなりの格好をしてレストランに出かけた。船上で知り合った人たちと一緒のテーブルで食事をさせてもらい、僕もお酒を勧められて、多少上機嫌になっていた。フィリピン人で構成されたラテン系バンドが各テーブルを回ってリクエストされた歌などを歌っていた。時にはテーブルの近くで、曲に合わせて社交ダンスを嬉しそうに踊っている人たちもいた。バンドが僕たちのテーブルに来た時の事。僕もちょっと上機嫌になっていて、海友を抱いてちょっとふざけて踊ってみた。周囲の人からは喜ばれたのだが、海友にとってははなはだ迷惑だったようだった。そこで奴は生まれながらの特技(?)でもある奇声を発して騒ぎ出してしまったのだ。飛鳥のディナーは、毎晩たっぷり2時間はかかるコースメニュー。奴がずっと大人しく座ってしられるはずがないのは当然の事だが、飽きてる上に、自分を好き勝手にもてあそばれたのが許せなかったのか、僕の手から逃れた奴は、奇声を発しながらレストランの中をうろちょろしはじめた。別のテーブルを覗きに行ったり、テーブルの下に隠れたり。僕らは親としてちょっと冷や汗を流しながら、奴を追いかけていた。多分、ほとんどの人がまだ1歳の分別もつかない奴のその行為を微笑ましく見守っていてくれていたと思いたい。
 しかし、しばらくするとレストランマネージャーらしき人に、「他のお客さんに迷惑がかかるので、ちょろちょろさせないで下さい」とかなり厳しく注意を受けた。奴がこれ以上大人しくしてる訳も無いし、申し訳ないので、早々にレストランを出て部屋に戻ることにした。その時は気付かなかったのだが、後日どうやらゲストの中からクレームが出ていたらしい。それ以来、ディナーに海友が参加することは禁止された。
仲良くなった多くのゲストの人に「そういう訳で、海友はディナーに出れないんです」と説明すると「そんなの気にする必要ないわよ。ほとんどの人が海ちゃんに会いたがってるんだから」と言ってもらえるのがせめてもの救いだったが、こういう船では、一人でもクレームが出れば、それに対処しなければいけない。
飛鳥では全員のディナーが一度にできないので、2回に分けて食事が行われていた。ななので、1回目に僕が参加し、海友用の食事をトレーに乗せてもらい、そそくさと部屋に持って帰る。で2度目にミナがディナーに参加してる間に、部屋で僕が食事を奴に食べさせる。そんな日々が続いた。
しかし、制限されたのはディナーだけでは無かった。僕たちの行動の責任者でもある運行部のスタッフの人から、「お客さんからも、クレームが出てるので、注意して下さい」と念を押されてしまった。どこへ行っても「海ちゃん、かわいい~!」と言って突然知らない人にだっこされる。どうやら小さな海友の存在は、かなり船内に広まっていたようだ。いくら人見知りしない海友とはいえ、さすがに自分が自由に遊んでいるところを急に持ち上げられて、行動を阻害される事にストレスを感じてしまったのか、その度に広い船内に「き~!!」という奴独特の奇声が響き渡った。もちろん、だっこしてくれる人に悪気は無いのだが、「静かにしろ」といって聞ける年齢ではない。奴が奇声を発したり、うろちょろし過ぎる度、誰かにクレームを付けられるのでは無いかと心配になり、奴の行動範囲はどんどんと狭まっていった。一度だけだけど、実際にゲストから「静かにさせろ!」と面と向ってクレームを付けられた事もあった。
ゲストも400人もいれば、色々な理由で子供嫌いは当然いるだろう飛鳥のスタッフの中にも、とても好意的に見てくれる人もいれば(ほとんどの人が好意的だったと思うのだけど)、あからさまに迷惑そうな顔をする人と両極端で、その態度の違いに僕たち夫婦もかなり神経を擦り減らしてしまった。100人がオッケーを出しても、1人が駄目出ししてクレームが出れば、そこにはいられなくなる。クルーズ行程後半頃には、広い船内で海友がまともに遊べる場所は、人気の無いトップデッキか、キャットウォークと、屋外だけになっていた。船内で家族でまるで隠者のような生活。好気心旺盛でどこにでも行きたがる海友に、「あっちは駄目、こっちも駄目」と駄目出しして回るのはとても辛かったし、奴に対しても本当に申し訳ない思いでいっぱいだった。イライラして夫婦喧嘩にまで発展したりもしたし、マーシャルに着いた時には、「日本までの乗船を諦めて、ここで家族全員で下船させてもらいたい」と心底思ったものだ。マジであれ程「早く家に帰りたい」と思った旅は今までに無かったと断言できる。
僕たち家族にとっての超過酷な旅とは、マイナス20度の氷上でも、未開の無人島への上陸でも、外洋で漂流したことでも無く、超豪華客船での優雅な旅だった。ああいう船には、分別が着く年齢になってから乗せるべきと、痛切に感じた貴重な経験でもあった。

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