PHOTOGRAPHER’S DIARY

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Photographer’s Diary

Wed 09
ヤップ島にはまった人々
2007.05.09

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ヤップ。この島には、何か不思議なパワーを感じる。訪れるたびに、日本人や他のミクロネシアの島々でさえも、もう感じなくなってしまった、「何か」を強く感じることができる。こんな事、あまり人前で口にすると、「いい年して何言ってる」と言われそうだったから、言わずにいたけど、今回、彼女とこの島を訪れて、自分の感じた事、思った事をストレートに表現する姿を見て、自分もカミングアウトすることにした。

 「絶対宇宙人がいるよ、ここ!」。「うん、いるいる、きっといるよ」。迷路のようなマングローブをボートで走り抜けながら、彼女は船首に座り、大きく両手を広げ、嬉しそうに空を見上げた。 
 彼女は、常人とはちょっと違う感覚の持ち主。しかし、ヤップではそれが普通のことのように感じる。僕にもその感覚が覚醒してしまったのか。いやいや、実際にそう思わせる事がこの島では日常のように起こってしまうのだ。ヤップの中心地、コロニアにいたのでは、多分感じることはなかったかもしれない。街から離れた、人口30人のワチュラブ村にある、ビレッジビューリゾートに滞在していたからなのかもしれない。
 3月の頭に、「ヤップデイ」というヤップでは一年で一番大きな行事が行われる。ヤップデイの目玉は、それぞれの村々や、離島の人々が、カラフルな伝統的衣装を身につけて踊るヤップダンス。会場となった、戦時中の日本統治時代の学校跡地には、ヤップ中の人々が伝統的衣装を身につけて集まってくる。当然僕たちも、午前中のダイビングを済ませ、観光客気分で撮影に訪れた。

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 しかし、ヤップデイ前日、雲行きがおかしい。どうやら、熱帯低気圧が近くに発生しているらしく、天気が崩れていきそうな雰囲気だった。「明日は雨かな」と残念に思って空を見上げていたら、ライズダイビングセンターの大介君が、いつものようにビンロウジュの実を噛みながら、遠くを見るような目でこう言った。「パサンちゃんが、祈祷師が、明日晴れるようにホワイトマジックかけてるって言ってるから大丈夫っすよ」。「・・・・、え?ホワイトマジック?」。(奴も結構いっちゃってるよな・・・)。最初は適当に受け流していた。しかし、翌日は、嘘のような雲一つ無い快晴。にわかには信じられなかったが、ヤップデイは無事開催された。
 ただ、暑過ぎる!2日間に渡るヤップデイ、明日もこんな暑かったら洒落にならない。すると大介君が、また遠い目で「あ、パサンちゃんが、明日はもう少し雲多くして過ごしやすくするって」。「・・・・え?そうなの?」。
 翌日、空にはうす雲がかかり、過ごしやすい天候になった。僕はパサンちゃんと呼ばれるヤップ人に直接聞いた。「これって本当なの?」。「ホワイトマジックを行っている間、祈祷師たちは、水を飲んではいけないんだよ。水を飲んだら、雨が降る。去年もそうだったんだよ。最後の行事が終わった後に、祈祷師たちが一気に水を飲んだから、終了と同時に土砂降りになった」。「へ~」。
 「そろそろ皆引き上げてるだろ。今年もホワイトマジックで天気を良くしてるから、もうすぐ祈祷師たちが水を飲んで、雨が降るの知ってるから、早く帰ろうとしてるんだよ」。彼がそう言い終わるか終わらないかの内に、雨が降り始め、土砂降りへと変わった。パサンちゃんの手にも、飲みかけのミネラルウォーターのペットボトルが・・・。
 パサンちゃんとは、彼女が「神」と崇拝する、ヤップ人の祈祷師の一人。ちょっと長くなってしまったけど、この話は本当の話。僕は嬉しくなった。まるで物語の中のような出来事が、ヤップでは、そのまま現実に起こっている。そして、ここの人たちは、それを当たり前のように受け入れている。
 しかし、困ったことに、その時期「マンタの交尾が見れる」というので、取材に訪れたのに、このヤップデイを境にまったく見れなくなってしまった。「ダイバーが多すぎてマンタが嫌がっている」とか。「サイパン近くの海底火山が噴火したらしいから、そのせいかもしれない」とか憶測で色々言われていたけど、僕は「ホワイトマジックの影響でマンタがいなくなったんじゃないか。ダイビングじゃなくて、ヤップデイを見に来いってことなんじゃないか」という説に賛成することにした。撮影的には困ったけど、個人的な経験としては、とても「おいしい」状況だったとだけ伝えておこう。

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 彼女もそんな状況を楽しんでいた。何が起こってもおかしくない島でのダイビング。マンタが出ても出なくても、海中での彼女はいついもワクワクしたように目を輝かせていた。マンタが出ないミルチャネルは、まるで深い霧に包まれた雲海を、あても無く漂っているみたい。それが冒険チックでもあり、目的を果たせなかった探検隊みたいでもあり、そんな状況に立たされた僕らを客観的に眺めながら、皆が、意味も無く「おいしい」と感じていた。
 陸でもそうだ。彼女がヤップ滞在中の短い間に、創作意欲を掻きたてられて描いた、ヤップをイメージした絵画。「これ、ジャングルの中で撮影したらいいんじゃない」。何気なく提案した僕の案が受け入れられ、大きなキャンバスを持って、スタッフたちとジャングルの奥深く分け入って、撮影をした。皆、汗だくになり、蚊に刺されながら、こんなことをしている。廃墟となったストーンパスは、ジャングルに同化して、不思議な空間を作り出している。そこでは、ヤップ独特のジャングルのオーラを感じていた。

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 彼女は、青い海をバックに撮影されるよりも、苔むしたジャングルの中の奥深い湿った空気の中での撮影を好んだ。僕は、今までのモデルとは違う感覚の彼女に影響され、「美しく撮ろう」という思いから、「ありのままに撮ろう」という思いに変わっていった。嫌、彼女がそうさせていると言うよりは、ヤップという島が、彼女に、そして僕に「ありのままでいいんだよ。ありのままに表現すればいいんだよ」と語りかけていたのかもしれない。
 陸も、海も、何かの知識を詰め込むのではなく、何かを感じ、感動すること。その大切さを教えてくれる島。ヤップってそんなところだ。彼女は、ヤップ島で不思議なパワーを身体全身に詰め込んで、僕より一足先に、日本へと帰っていった。最終日の夜、別れの挨拶をしに、夜景を撮るために、カメラを空に向け、ビーチで一人座り込んでいる僕に向かって、「帰りたくないオーラ」を発散していた彼女が印象的だった。そして、残された僕は、ますますこの島の深みへとはまっていったのだった。

[彼女」のブログ 
http://yaplog.jp/nikkisdiary/

ヤップ取材の記事が掲載されているダイビングワールドは明日発売されます。
WEB-LUEでのヤップ特集は6月の夏号に掲載予定です。

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2007年2月に越智隆治が行ったヤップでの取材が形となりました。月間ダイビングワ... 続きを読む

コメント(11)

「今回、写真と文を書いてくれてる、写真家の越智さんは、ちょっとかわってる人!(笑)。」
ちょっとかわってる人なんですね、越智さん!?

「だからこそ、気があって、いろんなアイデアを出し合って仕事をした。
初めて日記という存在を理解して引き出してくれた人。」
これって、すっごい!!
越智さん、かわっているけど、すっごい人なんですね!?(カッコ内は、山口日記さんのブログから引用です)

ヤップ島行ってみたくなりました♪

モルジブ、気をつけて行ってきてください。

海きれーい。
特に季節的なシーズンは問わないのかな。

いってみたい~。

Yukiちゃん>久しぶりだね。フィンソックスは家にあるよ。「かわっているけど、すっごい人なんですね!?」という突っ込みのような質問をを入れるのはや~め~て~。彼女はきっとヤップがとても楽しかったのでしょう。

てんちゃん、一応夏が海穏やかみたいよ。まだ行ったことないけど。

クルーズ中、皆でやっていた占いで、越智さんに「宇宙人」と診断されたことを思い出しました。
YAP行こうかな。。こーゆー世界、非常に好きです。

↑マツがワイルドだ!!(笑)

ビデオ撮影班だったマツの視点からもうひとつのダイビングワールド。
http://www.creator.ms/onepiece/categorise/yap/

祖母さん>是非行ってみてください。ちょっとイメージしている宇宙人とは違う感じもしますけど。きっとはまると思いますよ。

TAGO>そうね。ちょっとまだ色白だけどね。

まっちゃん>そんなに暴露できるような話ばっかだったっけ?お前、俺のそういうシーンしか撮影してないだろ~。もっと美談を載せてよん

フラをしている私には、「カラフルな伝統的衣装を身につけて踊るヤップダンス。」が気になるな~

今回の南アフリカで、「ちょっとかわってる越智さん」を実感しました((^^;
はまりそーです

umeちゃん、南アフリカお疲れ様。楽しめたかちょっと心配してますけど(笑)。え、でも南アフリカでちょっと変だった?いたって普通にしてたつもりなんだけど・・・。

越智さん

 お久しぶりです !(^^)!
ダイビングワールド見ました☆
温かいヤップ。。。行きた~い
日記ちゃんのボートの写真まさにありのままですね ブルーが美しくて素敵
越智さんも現地人?馴染んでますね!!!

毎日眠かったけど、十分楽しみましたよ~
全てを忘れるくらい、笑いました♪
いい旅行でした(*^^*)

へんっていうか、「あー、こういう人だったんだ」ってイメージ変りましたね。

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  • 尾高大樹
    はじめまして、スリランカのホエールスイムに興味...
  • 高橋
    はじめまして。 きれいな写真ばかりで感動しまし...
  • 越智
    すみません、2017年の間違いです。訂正しまし...
  • 重田精一郎
    開催スケジュールに「御蔵島ドルフィンスイムツア...
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長くワープフィンを愛用している。クジラやバショウカジキ、シャークダイビングなどは黒の一番硬いワープを使用。イルカ、アシカなど、一緒に泳いだり、回転したりする場合には、少し柔らかめの白のワープを使用している。フィンソックスを使わず、素足で履くので、かなり足にフィットしないと激痛が走ることもあり、なかなか他のフィンに移行できない。 黒を使う理由は、様々で 1/スキューバダイビングの場合は、撮影時にどこかに足をかけたりする場合に汚れたり、傷がつきやすい。なので、白はすぐ汚れてしまうから黒を使用。 2/クジラやバショウカジキなどは、直線で横に泳ぐ場合が多いので堅めの黒を使用。 3/タイガーシャークやスリランカでは、黒いフィンを使用することを奨励しているために黒を使用。 などあるため、黒のフィンを使用する頻度が一番高い。 あとはブレードの長さが、個人的には撮影時にフィンが映り込みにくい長さという感じ。 以前は、フィンのパワーに負けないように、走り込んだり、色々とトレーニングもしていたが、最近は忙しさもあり、ほとんどトレーニングができていない。それに、年齢的にも当然脚力も落ちて来ているんじゃないかな〜と思うところもあった。 そんなとき、以前パラオのデイドリーム取材でお世話になったガイドの遠藤学さんから連絡をもらい、「越智さんには是非使ってみて欲しい」というので、使ってみたのが、このワープフィンの先端を遠藤さん自らがカットしたオリジナルフィン。 遠藤学オリジナル形状フィンとでも言えばいいのか。正直、カットした部分は手作り感満載で、決して綺麗とは言えない。しかし、実際に、タイロケでのダイビングや、その後の奄美でのホエールスイムでも使用してみたところ、これがかなり使いやすかった。 どこが違うのかというと、説明は、以下のブログから https://sandwave.jp/2017/04/5379/ つまり、自分が使用してもこの記事で書いてあることと同じ感覚になるということです。感覚というか、実際に、ブレが無くなり、より自然にスムーズにフィンキックができます。これ、遠藤さんがガイド現役時代に、すっごくお世話になったから言っているわけではありません。「良いものは使う、悪いものは使えない」昔からはっきり物を言ってしまう僕なので、いくらお世話になったからって、お愛想で「これは使えます!」とは言いません。だって、下手したら、命に関わることでもありますからね。 ということで、僕は、白のワープフィンも、この形状にしてもらおうと思っています。 それにこれはあくまで噂でしかないですが、この形状で評判が上がれば、この形状のニューワープフィンが作られる可能性もあるみたいです。あくまで噂ですけど。遠藤学オリジナル形状ワープフィンがプロトタイプのガンダムだとしたら、ジムが量産されるってことですね(古い)。 従来のワープフィンに、プラスカット代で5000円ほど必要になりますが、今までワープフィンを使っていて、少しブレが発生すると感じている皆さまは、是非、新宿のサンドウェーブで遠藤さんにフィンをカットしてもらってください。 僕以外にも、激流の海を潜るガイドの人たちの間でも徐々に噂になってきてる、ある意味「プロ」が認めるフィンになりつつあるのかもしれません。 そのうち、「お、あなたも遠藤学モデルですね。通ですね〜」って海でやり取りするようになるかもですね。 P.S. この記事を書いた直後に遠藤さんから白のワープフィンをカットしたものが送られて来ました。次のアシカスイムで使用してみたいと思います。

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スペシャルトリップに参加いただいたゲストの皆様からご感想をいただきました。
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INTO THE BLUE では、写真家・越智隆治 が、バハマ、トンガ、フロリダ、マーシャル 、 タイ、フィリピン、南アフリカなどなど、取 材で訪れた各国での体験談や変り種情 報などを、写真や動画と一緒にブログ形 式でつづっています。

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世界中の海を自然環境をテーマに取材を続ける水中写真家。イルカと人の関係に興味を持ち、国内外の多くの海でイルカの撮影を行っている。
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