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Photographer’s Diary

2013年8月のエントリー

Fri 09
鴨川シーワルドのポスター完成。シャチの水槽に入ったときの事
2013.08.09

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鴨川シーワールドでの2014年のカレンダー撮影を終えた後、バハマ、フロリダ、メキシコと2ヶ月間国外を点々としながら、イルカやジンベエザメ、マンタなどの撮影を行っていた。

急な撮影依頼であった事、自分自身がすでにロケスケジュールがいっぱいいっぱいだった事もあり、時間的余裕も無かった今回の撮影。写真のセレクトなどに関して、ある程度自分で多めにセレクトし、最終的なセレクトは水族館関係者の方にお任せした。

そして、昨日、完成したポスターと、数日後に納品されるカレンダーの色校段階のサンプルを初めて見せてもらった。

初めての水族館でのカレンダー撮影。厚いアクリルガラスの水槽を通して撮影することの難しさ。どうしてもストロボを使用したくなかったので、室内の撮影は、ISO感度をどれだけ上げても、絞りを解放近く、あるいは解放しないとブレてしまうような暗さ。当然被写界深度も浅い。にもかかわらず、ほとんどを手持ちで撮影。被写体をガラス面に対して、垂直に撮影しなければ、ピンは来てるはずなのに、どうしてもピンの外れたような、ぼやけた写真になってしまうから、三脚に固定するよりは、自分がその位置に即座に移動する方を選択した。そのボケ味を良しとするかは個々の判断、水族館側の判断ではあるけど。

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<アマモの中にいるギンポの写真。アマモが光合成をして、酸素がぽこぽこ出ているところと、口を開けたギンポが水面に写ってるところが気に入っていたけど、ガラス面に垂直に撮影できなかったために、目が微妙にぼけてしまったようだ>

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<これは、撮影下見のときに撮影したネズミフグ。かわいいのだけど、ガラス面への反射に対しての対応をしていなかったので、フグの右上に写り込みが入っている>

それでも、ストロボを使用して、かっちり撮影するよりは、展示してある照明の色温度や陰影を重視し、ブレとボケを覚悟の上での撮影だった。

要するに、一般の入場者でも、撮影しようと思えば、撮影可能な位置から、普通の撮影機材で撮影できる写真がほとんどなのだ。

もちろん、何カ所かの水槽の中に入れさせてもらって、撮影もした。

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<水槽に入って撮影した、レパドシャーク。シンクロして泳ぐ瞬間を捉えた、個人的には、結構気に良いっているワンカット>

特に今回、企画段階でシャチの水槽に入って撮影ができるのか、できないのかという事が、水族館側にとって、最も判断に迷うポイントだったようだ。

シャチたちへの配慮、そして、安全性。

「ここ6〜7年は、カレンダー撮影のみならず、テレビなどの依頼でもGo Proのような小型のカメラを水槽に入れることさえ認めていない」と広報の方から釘をさされた。普段見慣れない存在が突然水槽に入ることで、好奇心の強いシャチの行動に悪い影響が出ることもあるらしく、かつ万が一の事も考えなければいけないわけだ。

僕を水槽に入れるか、入れないかの最終的な判断は、現場サイド、シャチのチーフトレーナーの判断に委ねられた。面接(?)は、シャチの水槽のガラス窓の前で行われた。このやりとり次第では、水槽に入ることがNGとなるはずだった。しかし、何が功を奏したのか自分でもわからないのだけど、こちらから「入れさせて欲しい」と強く懇願したわけでもないのに、「じゃあ、いつ入りますかね」と、水槽に入っての撮影は、周囲の関係者も驚くほど、あっさりと許可された。

何故なのかはわからないが、その場にいた方たちから、「こんなことは、ここ最近はあり得ないですよ」と言われた。拍子抜けするほどあっさりと、撮影許可を得たのが何故なのか、自分でもいまだにわからない。

いずれにしても、天候次第ではあるが、撮影の日程も決まり、それまでの数日間で、他のトレーナーの人をタンクを背負わせて水槽に入れて、あまり興味を示さなくなるように、人慣れさせておくと言われた。

撮影当日、僕はカメラをハウジングにセッティングして、水槽ののぞき窓から、そのハウジングをシャチたちに見せるように近づけてみた。すると、あっと言う間に、窓に近寄って来て、この状態で、しばらく僕の手にあるハウジングに見入っていた。何か新しいおもちゃでも見つけた子供のようだった。

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<ハウジングを近づけると、べったりと窓枠に近づいて来た、シャチのララ>

近くで撮影できるのはいいけど、実際のところ、ずっとこんなに近寄られたら、まともに撮影ができない。撮影時間は、ショーとショーの間のせいぜい15分から20分の間。

それまでに僕の存在をあまり気にしないで、行動してくれるようになるのか・・・と言っても、あまり気にしなくなりすぎて、離れられすぎても困るのだけど。とか、どういうシーンを撮影しようかとか、色々頭の中で考えるものの、「やっぱり入ってみないと、彼らがどんな反応をするか、どんなシーンが撮れるかわかんないよな〜」という結論に達した。

その他の動物撮影の進行をスムーズに行うために、私服の上にドライスーツを着込んで、トレーナーの女性にガードされながら水槽へとエントリーした。水槽に入る事に対して、必要以上に躊躇することも、興奮することも無かった。

「じゃあ、入って下さい」と指示されて、エントリーして、カメラを受け取って・・・、ステップのところに膝立ちして、身体を沈めて、横になって・・・。と淡々を準備を進めた。が、赤ちゃんのルーナが、お母さんのラビーの静止(?)するのも聞かず、「わ〜〜〜!」って感じで目の前まで接近してきた。 おいおい・・。

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<興味もってくれるのは、いいけど、これでは撮影が・・・。もうちょっと下がってくれないかな>

すぐさま、トレーナーの指示で、シャチたち、距離を離される。

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<母親のラビーも「これ以上近寄っちゃだめ!」みたいな感じで、前進しようとするルーナを止めている?おばさんのララも、実はかなり興味津々なのか?>

しかし、指示を出されて以後のシャチたちの状態は、ほとんどが下の写真みたいな感じで、3人正面顔で並んでいる。「うう、君たち、そこでその状態で止まられても・・・」というのが正直な感想。おまけに、この横の水槽には、ルーナのお兄ちゃんのアースがいて、柵越しに、そちらばかり気にしてくれるので、ほとんどの写真に柵とその奥にいるアースが微妙に写ってしまっていた。

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<正面顔揃いで、かわいいと言えば、かわいいけど、こういうのが撮りたいわけではなかった>

たまに、トレーナーの指示で、水槽内を泳いでくれたりもするのだけど、「う〜ん」と首をかしげてしまった。

僕は、彼らのどんなシーンを撮影したいんだろう・・・。短い撮影時間で、再度そんな事を考え始めた。

自分は、彼らに存在を受け入れられつつ、その状態で、僕がそこにいることを当たり前の日常の事と感じてもらい、リラックスして普通の生活をしているところが撮りたい。親子の愛情を感じる1枚が撮りたい。

しかし、そうなるには、やはり時間が足りない。

棒でつつかれて、顔を上げると「時間だから、上がって下さい〜」と指示を出された。不完全燃焼なまま、撮影を終えた。チャンスは与えてもらったわけだから、感謝しなければいけない。しかし、悔いが残らないわけではなかった。

上がるなり、何人かの人に、「威嚇されてましたね〜」と言われた。まあ、それは自分でもわかってはいるのだけど、良い撮影ができていない状態でそういわれると、ちょっとへこんだ。

翌日以降は、他の生き物たちの撮影を行うスケジュールになっていた。しかし、朝、シャチのチーフトレーナーの方がやってきて、「天気が良いから今日も入ってみる?」と言ってくれた。

嬉しさを押さえて、僕は「いいんですか?問題無いのなら、もう一度入りたいです」と伝えると、「じゃあ、すぐ準備しましょう」ということになった。

パターン的には、前日とほとんど変わらなかった。トレーナーの人は、多少柵の写り込まない位置に3頭のシャチたちを誘導してくれるものの、見ているとずりずりと、お兄ちゃんのいる柵の方へとズレて行く。

そんな状況下で、違ったのは、自分がしばらく目を閉じてみたことだ。もしかしたら、危険だったかもしれない。でも、目の前にいる彼らの行動を見て、冷静にしているつもりが、「撮りたい!」とはやる思いが押さえきれず、ちょっと焦っていたのかもしれないと感じたから。

しばらく目を閉じて、そっと目を開けると、今まで目の前でこちらを凝視していたラビーとルーナが、水槽の中央付近で顔を合わせてまるで語り合うかのようにしていた。この行動が、実際にはどんな行為なのかは分からない。しかし、ほんの短い間だったけど、夢中でシャッターを切った。

この写真を見て、最近メキシコのセノーテで、妻と長男を撮影した写真を思い出した。これも、他のものを撮影しようとしていたときに、妻の元に、不意に息子が手を伸ばして泳いできた瞬間だった。思わずシャッターを切っていた。

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ポスターのキャッチコピー「海の世界、つながる想い」は、僕が考えたものではないのだけど、自分が撮りたい写真は、まさにそんな写真なのだと改めて考えさせられた。

もっと、もっと、こんなシーンに遭遇し、1枚の写真の中に切り取っていければいいな。

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越智隆治プロフィール

世界中の海を自然環境をテーマに取材を続ける水中写真家。イルカと人の関係に興味を持ち、国内外の多くの海でイルカの撮影を行っている。
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