インドから帰国して、すぐに引っ越しをすることになっていた。引っ越し業者が来てくれる前に、縁起の良い日に、少しだけ荷物を自分たちで運び込んだ。二男はともかく、長男の海友は、あまり引っ越しに乗り気ではなかった。仲の良い友達と離ればなれになってしまうから。

「引っ越したくない」。「引っ越したくない」と、何かある度に、小声で僕に訴えかけていた。それでも、もう決めてしまったことだし、できれば家族全員が、前向きな気持ちで新たなスタートを切って欲しいと思った。

気乗りしない長男と、あまり気にしてない二男を連れて新たな我が家へ荷物を運び込んだ。何も荷物が無い家は、思いの他広々として、子供たちには、格好の遊び場になった。追いかけっこしたり、隠れんぼしたり、僕と妻が、室内をチェックしたり、カーテンを付けたりしている間、二人は嬉しそうにはしゃぎまくっていた。

「どう、海友？」と訪ねると、「楽しい！」と答えた。「皆に遊びに来てもらえばいいよね」と言うと「うん！」と元気に返事をして、また弟と一緒に、はしゃぎまくっていた。

いつかは、離ればなれになり、会う機会も減っていってくかもしれない。自分は、子供の頃から淡白で、小学校、中学校、高校、大学と、進学するたびに、昔の友達とは、皆無と言っていいくらいに、会わなくなった。

親友がいなかったわけではないと思う。会えば楽しかったし、バカな事も一緒にやった。でも、生きて行く上で、それほど重要とも思っていなかったのかもしれない。「一人で適当に生きていける」という思いが常にあった。でも、今の子供たちは、どうなんだろう。

小学校入学と、幼稚園入園とともに、新たな友達との生活が始まる。周りに流されないで、自分の意思をしっかり持って行動できる子になってくれればいいな。