明日、引っ越しをする。つとめていた新聞社を辞めて、フリーになる決心をすると同時に、眺望の良さが決めてで、悩む事なく、住み始めた場所。長男の海友も、二男の颯友も、自宅出産だったから、病院ではなくて、この公団のマンションの一室で産声をあげた。

だから、多分他の人が思っているよりも、この場所には、深い、深い思い入れがある。隣近所の人たちも、本当に皆、気の合う人たちだった。僕はロケに出がちで、なかなか交流を持つ機会が少なかったけど、その間、妻が子育てにストレスを感じずに、笑顔で二人の息子を育てることができたのは、そんな周囲の人たちの存在や助けが本当に大きかったのだと思う。

クリスマスや豆まき、ハローウィンなどのイベントの時には、本当に沢山の子供たちが集まってきた。特に最後のハローウィンでは、１００人以上の子供たちが家までお菓子をもらいに来てくれた。鬼役を快く引き受けてくれたお兄さんもいた。

たまにしか家にいない僕は、その驚異的な数に圧倒されるとともに、嬉しくなった。

子供たちだけでなく、お母さん同士の仲の良さにも、驚かされた。初めは、「●●ちゃんのママ」とか、「■■君のママ」とか言っていたから、何となく誰だかわかったのだけど、いつの間にか「ミナちゃん」、「○○ちゃん」と、お互いを名前で呼び合っているから、誰の事話してるのかわからなくなった。

だからと言って、仲良しお母さんだけで、グループを組んでしまうというのではなくて、全ての子供を持つお母さんたちと仲良くなっていたから、その輪はどんどん広がっていっていった。

お父さんの中にも、尊敬できる人がいた。５人の子供のお父さんで、元PTA会長。その職務中も、職務を終えた後も、雨の日も、風の日も、雪の日も、ほとんど毎日、僕らのマンションの階下の決まった場所に立って、子供たちが登校してくるのを笑顔で見守っていた。時には、子供たちに話しかけたり、じゃんけんしたり。その場所だけ、草が無くなって、土が露出している。PTA会長って、テレビの学園ドラマだと、悪役だったりする事が多いけど、あんな人がいるということを多くの人に知ってもらいたいなと思った。

お別れ会も、本当に沢山開催してもらったようだ。

子育て日記で、子供たちとの事を全て知ってるかのように綴っているけど、僕は本当に何もしていないし、何もわかっていないと思う。はっきり言えば、ほとんど母子家庭状態だ。それでも、妻と子供たちが楽しく無邪気に、そして幸せに生活していけたのは、そんな素敵な人たちに囲まれていたから。そう思っています。

今も3人は、引っ越しの準備で食事が作れないだろうから、家で食べてねと言ってくれた友達の家に夕食を食べに行っている。その間に、別のちょっと年上のお姉ちゃんとそのお母さんが、お別れの挨拶に来てくれた。

お別れのプレゼントに添えてあった、短い手紙には、「あたたかい、Ochi family　が大好きでした」と書かれていた。

あたたかかったのは、僕たちではなくて、そんな皆さんだったと思います。

僕がロケでいない間、本当に沢山の人たちに助けられたと思います。

僕自身が、そんな全ての人に、直接会ってお礼を言う機会は無いけれど、引っ越しをして、少しだけ離れてしまうけど、これからもずっと、そんな素敵な人たちでいてください。

ありがとう。それでは、また。