3日目、風が上がり、風速は30ノット。それでも、海に出てバショウカジキを探す。「1週間、こんな日が続くこともある」とスキッパーのアンソニーが波を被ってびしょ濡れになりながら、教えてくれた。
この日も、島から、20マイル(36キロ)離れた海域まで捜索に出る。はっきり言って、この状況で海に入るとなると、相当泳ぎに自信が無いと、厳しいだろう。それ以前に、船に弱い人はあっという間にダウンするに違いない。
撮影目的で来るのであれば、こうしたコンディションを覚悟して来なければいけないということを思い知らされた。昨日のべた凪は、相当ラッキーだったのだろう。
僕らが、「昨日見れてるからもう無理しなくていいよ」と伝えたが、アンソニーは諦めない。「1週間、こんな日が続くこともある。それに、自分の中で最高に良かったスイムは、こんな条件の中でだったんだ。その日は1日6時間近く、ずっとカジキたちと泳ぎ続けたんだよ」。
やはり、バショウカジキスイムで良い写真を撮影することは、並のタフさでは無いんだろう。すでに、バショウカジキスイムを経験している友人のトニー・ウーから、「泳力のある人じゃないと厳しい」と聞かされていた。
しかし、昨日のように、イワシ玉が留まってくれさえすれば、可能性はあるはずだ。3日は、それを見つけることができなかった。3日目にして、初めて,水中で何も見れずに引き上げた。
不幸中の幸いは、4日目はもっと風が上がるという予報だったのが、少し落ち着く予報に変わっていたということだ。
そして、最終日となる4日目。確かに、風が落ち着いていた。7時に出港。8時過ぎには、バショウカジキの群れを発見、撮影を開始した。このときは、それほどイワシ玉がとどまらず、船に戻ったり、飛び込んだりを繰り返しながら、なんだかんだと1時間半近く、泳ぎ続けた。
同じ会社の船で、もう一隻、アメリカ人カメラマングループが乗船していた船が合流。向こうは3日目でまだまともに、泳げていなかったので、群れを譲って、別の群れの捜索のために移動した。
その後、数隻のフィッシングボートが鳥山の下でフィッシングを行なっている現場に到着。しばらく待機しながら,フィッシングボートが群れを譲ってくれるまで、少し離れた場所で待機していた。
1時間ほど待った後、1時過ぎに、「群れを譲ってくれるそうだから、潜る用意をしろ」と言われ、鳥山に接近してエントリーしてみる。そこには、小さなイワシ玉に、群がる、30~40匹程度のバショウカジキがいた。
もう、そこからは、そのイワシ玉がほとんど食べ尽くされるまで、撮影を続けられるほど、まったく動かない状態が続いた。僕らは、夢中になって撮影を続けた。32GBのCFカードが、いっぱいになり、カメラを代えて、そちらのCFカードもほぼ撮りきった頃に、10数匹になり、身体は、カジキのフンに削られて、ボロボロになったイワシを残して、突如カジキたちは泳ぎ去ってい行った。
それにしても、最後はイワシ玉が僕らの胸元などに隠れようとするから、それを狙ってくるバショウカジキたちが近いのなんのって、マジで刺されてもおかしくない勢いで突っ込んでくるにも関わらず、本当にギリギリで僕らを避けていくのが凄かった。
海に入っていた時間は、2時間45分。午前中と合わせると、実に、4時間以上もカジキたちと泳ぎ続けていたことになる。リサーチで訪れた、バショウカジキスイムは、コンディションの良い日も、悪い日も体験することができたし、こんなに多くのバショウカジキにも会うことができて、多いに収穫有りだった。
今は、カンクンからフロリダの西海岸の友人宅にお世話になり、次のタイガーシャーククルーズまでの間、つかの間の休息を取ることになる。