into the blue では、2019年1月末から9日間と、2月末から7日間にかけて奄美大島南部の古仁屋に位置する「ゼログラヴィティ」の船をチャーターし、ホエールスイムツアーを開催しました。
風が強くて欠航を余儀なくされた日や、出航を遅らせた日、波が荒すぎて早々に引き返した日など、クジラには出会えたとしても波が高すぎてエントリーが難しかった日など、天候に悩まされた日も多くありましたが、そんな日もあるからこそ、出会えた時の喜びはひとしお。
今回ガイドをしていて、奄美大島面白いなと思ったことがありました。
南半球のトンガで、ホエールスイムのガイドをして今年で7年になりますが、個人的には、奄美大島で見られてトンガでは見たことのない生態があるんです。
それは、1年前に生まれた子供を連れた親。
トンガで「親子」と言えば、ほぼ100%の確率でその年に生まれた子供。
体長約3〜5mくらいの生まれたばかりの子供が多いですが、奄美にきてから1年前に生まれた子供を連れた親を頻繁に見るようになりました。
奄美でホエールスイムをする前、「1年前に生まれた子供を連れた親」とか「昨年も来ていた母親」などという言葉をSNSやブログで見ていて、「ん?どういうことだ?」と実は思っていたのですが、実際に奄美に来て、その意味がわかりました。
「1年前に生まれた子を連れているということは、その母親にとっては奄美大島は最終目的地ではないのか?」
into the blueのスタッフの中でも議論が交わしましたが、本当のところはクジラではないので、わかりません。
ただ、水温もトンガに比べると低く、(クジラに限らず生物には地域差はありますが)、北半球のクジラの特性かもしれませんが、1年前に生まれた子供が母親に甘える姿は、人間にたとえるのであれば、高校生になりそうな子供がぎりぎり母親に甘えたいみたいな感じに思えてちょっと笑えて可愛らしい反面、この海で母親と永遠のわかれをする最後の瞬間に立ち会ったんだと思うと、少しセンチメンタルな気持ちにもなります。
実際、いまもその光景を思い出して、原稿を書きながらうるっときています。
「今、目の前にいるクジラはどんなことを考えているんだろう」、「どんな苦労を乗り越えながら奄美大島の地まできたんだろう」、そんなことを考えながら、毎日船に乗り、泳げる時には、特に親子の時は、「おじゃまします〜」と呟きながら泳ぎました。
今回最も印象的だったというか、嬉しかったのは、とある女性の言葉。
その方は、into the blueのツアーに参加するのも初めてで、さらにクジラを見るのも初めて、というより海のアクティビティ自体が初めてという若い女性だったのですが、残念ながらその日はスイムはできなかったんです。
ですが、船を降りるときに、こちらが「見せられなくてすみませんでした」と声をかけると、「いや、これからの人生の楽しみが増えました」と言ってくださいました。
この言葉が私の心にいまでも突き刺さっているのは、私が初めてダイビングをした日に同じことを思ったからだと思います。
「あ、これから人生楽しくなるな〜」と。
スタッフ同士、毎日その日のことを振り返る反省会をするのですが、「見せたい」と、ただそれだけを思ってクジラを探してはいるものの、見せられなかった日は、全員の心が沈みます。
船が大きいこともあって、クジラを探している間は、ゲストとコミュニケーションを取ることもほとんどできません。
ですが、その日はなんだか心がぽかっとしていたのをいまでも覚えています。
また別のある女性は、1日しか乗船する予定ではなかったのですが、その日はクジラに出会えず、急遽翌日も乗船することに。
2日目には水中でクジラと遭遇でき、前日には見せなかった、とびきりの笑顔を見せてくれました。
また、とある3人グループは、昨年も参加してくれていたのですが、昨年は水中で出会うことができず、今年リベンジ。
その日は、朝からとても透明度の悪い海でクジラと遭遇していたのですが、1度、私たちの一番近くを親子が通った時に入水したエリアが、なぜかそこだけ透明度がものすごく良くて、船に上がったリベンジ組は、クジラに出会えた感動を抑えきれずに号泣。
そのうち2人は今年のトンガホエールスイムも参加してくれることになりました。
一度出会ってしまうと、その魅力から抜け出せなくなってしまうクジラ。
海洋生物の中でもひときわ大きく、やはりその魅力は絶大だと、何度遭遇しても思います。
今年のinto the blue奄美ホエールスイムはこれにて終了になりますが、今年の8〜9月にかけては、トンガでのホエールスイムを開催いたします。
すでに満席の週も多くなってきましたが、水温は約23〜25度と暖かく透明度の良い暖かい海でクジラと遭遇できる希少な海です。
ご興味のある方は、ぜひお早めにお問いあわせください。
https://takaji-ochi.com/specialtrip/trip02
week1 2019年8月4日(日)〜8月11日(日) 満席
week2 2019年8月11日(日)〜8月18日(日) 満席
week3 2019年8月18日(日)〜8月25日(日) 残席5
week4 2019年8月25日(日)〜9月1日(日) 残席1
week5 2019年9月1日(日)〜9月8日(日) 残席0~5
week6 2019年9月8日(日)〜9月15日(日) 残席有り
week7 2019年9月15日(日)〜9月22日(日) 残席有り
week8 2019年9月22日(日)〜9月29日(日) 残席有り
文:稲生薫子 写真:稲生薫子 越智隆治 恩田義則