INTOTHEBLUE 水中写真家  越智隆治

Photographer Takaji Ochi Official Site INTOTHEBLUE水中写真家 越智隆治

Official SNS
Facebook
Twitter
Instagrum

Blog

Photographers Diary

天国でなく、竜宮城に旅立った富夢さん

2013.12.12 / Author.

_MG_2800s.jpg
<自分の作品に関して、嬉しそうに語っていた富夢さん>
今年10月にオーシャナロケで訪れた宮古島。そこで山本大司潜水案内の山本さんご夫妻に連れていって頂いたのが、Moby工房という、手作りのオリジナルアクセサリーや家具などを作っているお店。
_MG_2808s.jpg
<ハンマーヘッドシャークやジンベエザメなど、人気の木彫り作品が並ぶ店内>
島に住む多くの人が、この工房の作品を気に入っている。山本さんのダイビングショップのゲストハウスにも、Moby工房で創ってもらった、家具が並んでいる。
_MG_2825s.jpg
<富夢さんの家具が置かれている、山本大司潜水案内のゲストハウス>
店内に入っただけで、自分には宝の山だらけのように見えた素敵なお店だった。Moby工房店主で、作者の新島富(富夢)さんは、これまた、見るからに"職人"という感じの渋い風貌。僕は一目で富夢さんから溢れ出る人間味とオーラが気に入り、初対面にも関わらず、バシバシと写真を撮影した。普段は結構遠慮気味になるのだけど、何故かこのときは、どうしても撮影したくてしょうがなかった。こんな風に無遠慮に撮影されるのは、嫌がるのではと思ったのだけど、富夢さんも、そんな僕の行動を嫌がりもせず、受け入れてくれていた。
今月初め、山本さんから連絡があり、富夢さんが亡くなられた事を知った。来年には、またMoby工房を訪ねて、今回買いたくても我慢して帰ってきた、マッコウクジラの歯でできたネックレスを買おうと思っていたのに・・・。富夢さんの作ったネックレスを、一つは欲しいと思っていたのに・・・。きっと、そう思っていた人も多くいたに違いない。
facebookで亡くなられた事を聞かされながら、僕は失礼と思いつつ、「あのネックレスが、どうしても欲しいのですが」と思わずメッセージに書いてしまっていた。
_MG_2802s.jpg
<僕が気に入ったマッコウクジラの歯でできたネックレス(中央)>
山本さんも、一緒にお店にお伺いして、僕がそのネックレスを欲しがっていたことを知っていたからか、「家族の方に聞いてみます」と答えてくれた。僕が撮影した「富夢さんの写真を何点か頂けませんか」ということだったので、数点お送りした。
翌日、その写真と、オーシャナの記事を持って、山本さんがご家族の元を訪れて、僕がネックレスを欲しがっていた事を伝えてくれた。落ち着いたら、その件でご連絡頂けることになった。
_MG_2836s.jpg
<富夢さんが作成した、山本大事潜水案内の看板の前で家族写真を撮影した>
そして、昨日、葬儀を終えた息子さんから、ネックレスを譲りたいと連絡を頂いた。富夢さんは、「生前から自分の作ったものを、気に入って理解してくれる人が身につけてくれればそれでいいんだよ」とご家族に話していたそうだ。「だから、気に入ってくれた越智さんにもらって頂ければ、父も本望だと思います」と伝えられたときには、唇が小さく震えた。
たった一度しか出会っていない僕が、こんな我がままを言って良かったのかと、申し訳無く思った。もらって欲しいとは言われたものの、もちろん、ネックレスは、富夢さんとお会いしたときにお伺いした値段で購入させてもらうことにした。
多くの人に喜ばれる作品をもっと、もっと、作り続けて欲しかった。本当に残念でならない。
遺品となる富夢さんの作品たちは、息子(二男)さんが、宮古島に戻り、いつかお店をオープンしてそこで販売する予定だという。
富夢さんの遺骨は、ご家族によって、宮古島の海に散骨された。そのときに、ウミガメが水面に顔を出し、まるでその様子を見守っているかのようだったと息子さんからお伺いした。
それを見て「あの人(富夢さん)は、天国ではなくて、竜宮城へ行ったのかもしれないね」と奥さんがつぶやき、皆もそれに納得するように小さくうなずいていたそうだ。
たった一度しかお会いできなかったけど、きっと富夢さんは、竜宮城でまた好きな彫り物をしながら、仙人のような生活しているのではないかと願わずにはいられないのである。
_MG_2815s.jpg
ご冥福をお祈り申し上げます。

RecentEntry

  • カテゴリーなし