写真の無数の傷の原因として以下のような説が挙げられた。最初にはっきり言ってしまうと、どれも100%確実な原因として挙げられるものは無いので、こんな感じで傷つく可能性があるとの認識を持ってもらえればと思って読んでもらえたら幸いです。
❶シャチによる襲撃説
❷船のスクリューによる傷説
❸交尾説
❹マコシャーク(アオザメ)による攻撃説
❺アシカによる攻撃説
❻イルカによる攻撃説
❼巨大なイカによる攻撃説
❽魚網説
❾岩に身体を擦り付けた説
膝の手術で入院中のアンドリュー・フォックス(Andrew Fox)に写真を見せてこの傷の原因は何だと思う?と質問したところ、一つに言及するのは難しいと答えた。
アンドリュー・フォックスはロドニー・フォックス(Rodney Fox : Rodney Fox Shark Expeditions)の息子。ロドニーはホホジロザメリサーチや研究、そしてケージダイブの世界的第一人者。自らはアワビを取る素潜り漁中にホホジロザメに左腕と脇腹を噛みつかれ、462針も縫う大怪我をしながら、生還した伝説的な人物(まだ、ご健在だけど)。ホホジロザメ好きなら、一度はこの人物の名前を聞いたことがあるだろう。
アンドリューは偉大な父の活動を引き継いで、撮影や研究に協力するとともに、南オーストラリアのポートリンカーンという小さな漁港町でケージダイブクルーズを行っている。私も7回程この町を訪れて、彼のクルーズでケージダイブを経験した。
同じポートリンカーン発のクルーズで向かう、ネプチューンアイランドで撮影された傷だらけのホホジロザメの動画がYou Tubeにアップされている。そこでは、最初にシャチによる攻撃として紹介されていたが、最後に船のスクリューによって付けられたとする説もあるのではという追記がされていた。
https://karapaia.com/archives/52303201.html
まず❶のシャチ説だが、ロドニーはシャチによる傷は、これとはかなり違っているし、襲われたら多分サメはほとんどの場合死んでいるだろうとの見解だった。食物連鎖の頂点に立つと思われているホホジロザメだが、シャチはその上を行く、まさに海の絶対的王者と言える。
メガロドンという史上最大の古代ザメは、現存するホホジロザメの3倍もの大きさを誇っていたが、ホホジロザメやシャチとの生存競争に敗れて絶滅したとも考えられている。
❷のスクリュー説。下に紹介するのはスクリューで傷付いたジンベイザメとマナティの写真で、こちらはスクリューで傷付いたことが明白だが、このホホジロザメの傷はどうもそれとは傷のつき方が違うのでは無いかと言うのがアンドリューの意見だった。説として否定はできないが、スクリューで傷付いた海洋生物を少なからず見てきた私としても、スクリューでは無いような気がする。
1カット目の写真と2カット目の写真は、同じサメの左右側面の写真で、どちらにも無数の傷が付いている。スクリューにやられたのであれば、背中が無傷で両サイドに無数に傷があるのはちょっと不自然ではないか。
❸の交尾説だが、多くのサメが交尾のときにオスがメスに噛みつき、逃げられないようにして交尾を行う。そのため、メスの多くが傷だらけで泳いでいるのもたまに見かける。実際他の種類のサメの交尾シーンを目撃したことがあるが、言葉は悪いが、強姦されているようにしか見えなかった。
以下の写真はアンドリューが送ってきた、交尾によってできたメスのサメの傷。似てるような気もするが、アンドリューはこの傷も少し違う気がすると述べた。
しかも、このサメはオスだと言うのは確認していたので、交尾によって付けられた説も可能性が低くなる。
<交尾の時はエラに噛みつくために、エラが千切られたような痕跡が残るそうだ
❹のマコシャークによる攻撃説。同じネズミザメ科のサメでホホジロザメをよりシャープにした感じのサメではあるが、見た目からもサイズからも、ホホジロザメの方が圧倒的に強そうに見える。しかし、アンドリューがこの写真を見て真っ先に答えた説が、このマコシャークによる攻撃説だ。理由は縄張り争いの可能性を挙げた。縄張り争いでは、カモメが自分より強い鷲などに攻撃をしかけることもあり、可能性としては高いのでは、とのこと。
しかも、このホホジロザメはどちらかと言うと小型で体長も、3mほどだった。
また、❺や❻のように、捕食しようとして、逆に応戦して傷つけられることもあるそうだ。❺に関しては、以前ホホジロザメに攻撃されたアシカがサメの後に回り込み尾びれに噛み付いてホホジロザメを追い払うシーンを目撃したことがある。
<アンドリューが送ってくれた、アシカに付けられた口の下の傷の写真>
ホホジロザメでは無いが、バハマでドルフィンスイム中に、20頭のイルカがグレートハンマーヘッドシャークを集団で追い回し、どつき続け、グレハンは抵抗することも無く逃げ回ってるシーンを目撃したこともある。
一番意外だったのは、❼の巨大なイカに付けられた説。こちらも写真を送って説明してくれた。巨大なイカの吸盤には、鋭い棘?のようなものが並び、これをサメの身体に密着させて、写真のような引っ掻き傷を作ることがあるそうだ。
❽の魚網など人工物に絡まった説や❾の岩に身体を擦り付けた説も否定はできない。
以上、アンドリューとのやり取りや、ネット上での情報を下に、いくつかの説を挙げたが、確証は無いし、複数の要因がある可能性も否定できない。
病床にいたアンドリューが痛みを感じながらも、こんな質問に真摯に答えてくれるところに、彼の人柄が伺えた。いつも、質問を投げると必要以上に答えを返してくれる彼の性格に感謝した。
Into the blueでは、彼のクルーズ船をチャーターしてのホホジロザメケージクルーズも開催することがある。コロナ渦で、まだ見通しは立たないが、スケジュールが確定したら、改めて告知していく予定なので、ご興味のある方はお問い合わせから、ホホジロザメケージダイブに興味ある旨のご連絡をください!