INTOTHEBLUE 水中写真家  越智隆治

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Photographers Diary

なぜ、米国政府はイルカと泳ぐことを禁止しようとしているのでしょうか?知りたいです。

2006.11.22 / Author.


ブルーフェアリーさんから、インフォメーションに掲載した「米国政府がハワイのイルカと人間が泳ぐことを禁止する法令を検討中」という記事に関して、上記のような質問を送って頂きました。インフォメーションの「問い合わせ」欄は、オープンになっていないため、メールアドレスを記入して頂かないと、直接お返事ができません。よろしくお願いします。

他にも、こういう疑問を持っている方もいると思いますので、簡単にここでお答えします(以下の内容に、誤りや訂正、追記がある場合には、書き込みしてください。僕もそんなに詳しいわけではありませんから。よろしくお願いします。
合衆国では1972年の海棲哺乳類保護法(Marine mammal protection act)制定されて、アメリカ合衆国各地域に生息する海洋哺乳類の保護を目的としたルールや、罰則などを国として条例化しています。ハワイでもザトウクジラに対しての近距離へのボートでのアプローチやスイミングでのアプローチを行うことが、この法律で禁止されていて、それを破ると高額な罰金を支払ったりしなければいけません。日本でも小笠原や沖縄でも水中に入ってはいけないなどのホエールウォッチングのルールがありますが、これは、国の定めた法律ではなくて、あくまでもその地域関係者で決められた決まりごと(ルール)であって、それを破ったからといって、違法になるわけではありません。
クジラの場合、過剰なウォッチングやスイミングが、彼らの生息環境にストレスを与える(ハラスメント)という理由ぁら、かなり前から法にのっとった厳しウォッチングルールの元、ホエールウォッチングが行われています。はっきり言って、写真を撮影する僕たちからすると、このルールはとても厳しいものです。

同様に、ハワイに生息しているハシナガイルカ(スピナードルフィン)に関しても、研究者や、リサーチ団体の報告から、観光目的のドルフィンウォッチングのスピードボートやドルフィンスイミングをしようとイルカたちにアプローチしようとする行為が、彼らの生息環境を阻害するハラスメント行為に当たる可能性が高いとして、この海棲哺乳類保護法によって、厳しい罰則を設けて過度のスイミングやウォッチングに歯止めをかけるというのが目的です。
アメリカだけでなく、オーストラリアやニュージーランドなど、動物保護先進国(?)では、海洋哺乳類に対するこうした厳しい法律が、多く制定されています。ルールの内容は地域地域で違うので、かなり曖昧な法律だとは思うのですけど・・・。アメリカ合衆国内でも、僕が何度か訪れたことのあるフロリダのパナマシティーのように、ドルフィンスイミングがかなり観光化されている場所もありますが、ハワイは、海洋哺乳類保護志向の強い傾向にあるのではないかと思います。
それに対して、バハマのドルフィンサイトでのドルフィンスイミングや、トンガのホエールスイミングは、国力の無い小さな国ですから、観光のために、ドルフィンスイミングやホエールスイミングを容認しています。トンガなどでは、ホエールスイミングを中止するように、オーストラリアやニュージーランドの保護団体から圧力をかけられているともいいます。でも、実際に、ホエールスイミングに訪れる観光客のほとんどがオーストラリアやニュージーランドからの人々なんですけど。
そういうことで、ハワイでは、今、同じイルカ好きの人の間でも、スイミングしたい人、それすらハラスメントになるということで容認できない人など様々な人の思惑もあって、学術的なリサーチの結果を元に、ハラスメント行為に当たるドルフィンスイミングを法的に禁止する方向に話が具体的に進んでいるということでしょう。
まあ、昔から、そういう話はあったのですけど。
「イルカはダイバーと泳ぎたくなければ泳ぎ去ってしまう」という考えに関しては、正しいかどうかは、僕はどちらともいえません。広い海ですから、確かに邪魔者がいれば、泳ぎも人間より速い訳だし、どこかに行ってしまえばすむのかもしれないですね。でも、定住性のイルカたちの生活エリアってそんなに広いものでも無いように思いますし、彼らが好む安全な場所というのも限られていて、そういう安全な場所だからこそ、人間も安心してスイミングやウォッチングができるのだろうから、彼らにしてみれば、先に住んでいたにも関わらず、後から人間が彼らにアプローチしてきているわけだから。
そしてその行為をハラスメントととるか、イルカたちとの楽しい交流ととるかは、人の感じ方によって、違うと思います。後は、スイミングを行うにしても、過剰な人数が集まれば、それはそれで、問題だと思うし。かといって、人数制限しようにも、様々な業者や個人がスイミングやウォッチングを行っていて、その業者や個人間で、人数規制のルールを作るのは、おそらく至難の業だと思います。
以前に御蔵島のドルフィンスイミングのことで、三宅島と御蔵島の業者間の会合にオブザーバーとして参加したことがありますが、はっきりいって、どちらも自分の利益を最優先させることが先決で、増え続けるダイバーの人数制限という根本的な目的は、うやむやになってました。まあ、これは本当に大分昔の話で、今は御蔵島全然行かないので、どうなっているかわかりませんけど。
個人的には、スイミングに関して反対の立場では無いですが、過剰な人数の一度に行うことは避けたほうが良いのではと思います。ただ、そのルール作りが難しいんですけどね。トンガでも、どんどんスイミングを行う業者が増えていってるのが、不安ではあります。

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