INTOTHEBLUE 水中写真家  越智隆治

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Photographers Diary

1枚の写真を振り返る:エマニエル・ベアールの優しさ

2006.12.08 / Author.


これも新聞社時代の話し。ある日、某雑誌社で働いていた友人から「来日しているエマニエル・ベアールのインタビューするんだけど、撮影頼める?」という連絡が入った。


エマニエル・ベアールといえば、最近で言えば、ミッション・インポッシブルが代表的な出演作品だ。今年も「美しき運命の傷痕」という映画が公開された。しかし、僕が一番最初に、彼女を知ったのは「天使とデート」という1987年作成の映画。言葉のしゃべれない天使という役どころだったのだが、当時アメリカ映画の人気アイドルでもあった、フィビー・ケイツと共演していた。僕はフィビー・ケイツが好きだったのでその映画を観に行ったのだけど、その映画の中で天使役を演じていたエマニエル・ベアールの透き通るような美しさに、惹きつけられた。
あの頃、ソフィー・マルソーなんかも好きだったから、案外フランス人系の透明感のある女優が好きだったのかな?
何にしても、二つ返事で撮影を引き受けた。新聞社にはその日、休暇を取って撮影にでかけた。インタビューが行われたのは、キャピタル東急ホテル(ネット調べてみたら、2006年11月30日で営業終了と書いてあって、ちょっとびっくりした)。撮影はホテル内でなく、外でしたかったので、近くの日枝神社の境内で行うことにした。しかし、こういう撮影の場合、基本的に許可が必要になる。ただ、当日その場で許可を申請しに行って、すぐに許可が下りない事の方が多くて、2~3日前、中には1週間前くらいには撮影許可申請書みたいのを出さなければいけない場合も多い。テレビや映画など、大々的に機材を用意して撮影するならそれもわかるけど、カメラ1台、それにせいぜいレフ板くらいしか持ってないのに、いちいち許可取るのも面倒臭い。
それでも許可取らなければいけないから、友人に「ちょっと聞いてきてくれる?」と建前上、許可をもらいに行く振りをして、関係者に何か言われたときには「許可取り行ってます」と言える口実を作っておいて、さっさと撮影を済ませてしまった。案の定戻ってきた友人の編集者は「今日すぐには許可出せないって」というので、「あ、いいよもう終わっちゃったから」と言って、そそくさと撮影を終了して、ホテルに戻った。
昔から、撮影に関して粘りが足りないとはよく言われるのだけど、このときも、「もういいの?」とエマニエル・ベアール本人から聞き返されるくらいあっさりした撮影だった。それはともかく、撮影の前に、「外で撮影したいのですが」と言ったところ、日本人のプロモーション関係のスタッフに「いや、外はかんべんして下さい」と言われた。多分、エマニエル・ベアールに気を使っていたのだろう。しょうがないので、本人に直接聞いたら、「いいですよ」と快く了承してくれた。
多くの場合、外国人俳優などは室内だけで撮影を済ませてと、取り巻きからいわれることが多い中、気さくに了承してくれたことで、さらに彼女に対する印象が良くなった。その後、ホテルに戻ってインタビューを行うことになったのだけど、そのインタビューを行った編集者というのが、「子育て日記」でも紹介した、オーストラリアを彼の息子と一緒に放浪した友人。この日も奴は奥さんと生後1年未満の息子のユウスケ君をその場に連れてきていた。実は奴も、エマニエル・ベアールのファンだったのだ。
インタビューが終わってから、エマニエル・ベアールがユウスケ君を抱っこしたいと言い出した。友人にしてみれば願ったりだった。僕はすでにカメラや他の撮影機材をカメラバックにしまっていたのだけど、慌てて取り出した。暗かったので、感度1600のフィルムを装てんして、ノーストロボで撮影をした。それが最初の写真。彼女はユウスケ君を抱いて顔を除き込み「とってもかわいい赤ちゃん」と言って微笑んでいたのを覚えている。
彼女は、「その写真が欲しい」と言ってきたので、「じゃあ、現像してまた持ってきますよ」ということになり、数日後、どこだったか忘れたけど、写真を届けに行った。彼女にユウスケ君との写真を見せると、「ありがとう、すごく嬉しい」と言って胸にそっと抱えてくれたのが、まだ新米カメラマンだった自分にとっては、とても嬉しくて、さらにエマニエル・ベアールが好きになった。

普段あまり有名人だからと言って、サインもらったりするなんてことしないんだけど、この日初めて自分の撮影した写真に、サインをしてもらった。エマニエル・ベアールも、僕も、友人も、雑誌の紙面には、ユウスケ君を抱いた写真を載せて欲しいと思っていたのだけど、掲載されたのは、サインをもらった、日枝神社の境内で無許可で撮影した写真の方だった。
後にも先にも、取材に行ってサインをもらったのはこのエマニエル・ベアールだけだった・・・、あ、否、思い出した。そういえば、今ちょっと話題の漫画家、松本零次さんからももらったことがあったな。なんでだろう?

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