INTOTHEBLUE 水中写真家  越智隆治

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Photographers Diary

西オーストラリア、秘境カリジニ渓谷・星空の下で眠る

2008.05.08 / Author.

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エクスマスを発ち、昨日ブルームに到着した。その間、滞在していたのは、オーストラリアの中でも秘境と言われるカリジニ渓谷。赤茶けた鉄鉱石の埋まる不毛の土地に、忽然と姿を見せる異様な渓谷の姿は、今まで見てきたオーストラリアの様々な奇岩の中でも突出した強烈な印象を与えてくれた。毎年観光客の中から死者が出るほどの危険な場所でもあるらしい。

印象を強めたのは、ここでの滞在が全て屋根の無い、荒野での野宿だったせいもあるかもしれない。赤茶けた不毛の大地に、スワッグを広げて、その中に寝袋を滑り込ませて眠る。夜はまだ、太陽が沈む前に温められた地熱が残っていて、Tシャツと短パンだけでも寝汗をかくくらい暑い。しかし、明け方前には、乾燥した空気が熱を奪い、ダウンジャケットを取り出して着込んで寝なければ寒くてしょうがない。
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昼間の移動で、疲れ果てて、日が暮れると食事の用意だけ手伝って、食べもせずに早々にスワッグにもぐりこんで眠る毎日。この数日間、肉をまったく食べていない。食べるのは、果物と、水と自分で買ったナッツ類だけだ。まるでベジタリアンのような生活。
着てる服や靴はすでに、オレンジ色に変色している。「何でこんなことしてるんだろう」と不毛な疑問を抱くこともばからしくなってくるくらいに、疲弊している。「背中が小さくなった気がします」と同行のまっちゃんから言われるくらいに、体重が落ちた。
しかし、体重が軽くなった分、おかげで、渓谷を上り下りする激しいトレールを重いカメラバッグを背負って移動するのが、あまり苦ではなくなった。カメラ1台、レンズ1本を今回のルートで壊してしまった。次の
ダーウィンまでの9日間の野宿で、残りのカメラとコンピューターは無事に機能してくれるだろうか。
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辛そうなことばかり書いてしまったけど、星を見ながら眠るのも、悪いものではないと感じた。久しぶりに、オーストラリアの赤い大地に帰ってきた。小、中学生の頃、家族でこの不毛の大地を車で移動して、テント生活していた頃を思い出した。大学時代に、日本から4駆を船でオーストラリアに輸送して、砂漠地帯を走破したときも、こんな感じだったな。今回のエクスマスからダーウィンまでのルートは、実は、今までオーストラリアで走破していなかった、唯一のルートだ。
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だからと言うわけではないけど、途中でリタイヤするわけにはいかない。これを走りぬけたときに、自分の中でオーストラリアと中途半端に関わってきた数十年間に一区切りをつけるきっかけになると感じている。
満点の星空を見ながら眠り、広大な台地ひた走るときに、考えることの多くは、家族のことだ。離れているから尚更家族とともにいる大切さを感じる。僕の放浪の原点も、父や母、二人の兄弟との狭い車での移動だった。いつも南十字星を眺めながら眠りに着いた。
今回も4日間、たまに雲に隠れてしまうことはあったけど、いつも南十字星は、僕の頭上で輝いていた。いくつもの流れ星を見たけど、いつも「あ、流れた!」と思うだけで何も願い事を言う暇もない。

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