INTOTHEBLUE 水中写真家  越智隆治

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Photographers Diary

西オーストラリア、秘境カリジニ渓谷・空から蟲が降ってくる

2008.05.08 / Author.

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カリジニ渓谷のでは、5箇所の渓谷を巡って撮影を行った。その中でも特に強烈に印象的だったのは、最初に訪れたWeano Gorgeだ。渓谷の中のトレールは、難易度によってクラス1からクラス6までに分かれている。僕たちが普通の装備でなんとか行けるのは、クラス5まで。クラス6になると、普通の装備では進むことが困難になる。

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数年前には、日本人9人を含む15人が遭難したこともあるそうだ。それだけ危険な場所でもある。クラス5のトレイルでも、途中途中で行く手を水に阻まれて、濡れずに進むことはできない。中には、岩をよじ登っていて、足を滑らせて、川に落ちてしまう人もいた。
カメラバッグを背負った僕は、滑り落ちないように慎重に進まなければいけなかった。渓谷を進んで行くと、どんどんとその幅が狭まり、最後には人一人がやっと通れるくらいの狭い空間になる。乾燥した大地で、そこだけが湿気を伴い、流れる水のせいで、足元がつるつると滑る。
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僕らは、川の流れに沿って滑ってころげ落ちないようにと、しっかりと壁を押しながら先へ進む。狭い渓谷の上の方からは、パラパラと岩石の塵や埃が舞い落ちてくる。ゆるい岩盤が、いつ頭上に落ちてくるか気が気ではない状況だ。
クラス5の終着地点、Handrail Poolに到着。そこは、狭い渓谷から、水が一度溜まる池のようになっていて、空間が開ける。池の上には、塵や埃が渦を巻くように体積していた。数人がそこで水着になって、水に浸かり、火照った身体をクールダウンさせたり、高みからと飛び込んだりしていた。
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僕はその様子を撮影しながら、なんとなく水に浮かぶ埃を手に取ってみた。しかし、それは埃ではなくて、蛆虫のような蟲の塊だった。「うわ!これ全部蟲だよ!」と一瞬おののき、いまだに空から降ってきていた、塵を頭から払いのけて見ると、それも全部蟲だった。
見ると岩においておいたカメラバッグも蟲だらけになっていた。慌てて頭とカバンを手でかきむしり、蟲を払いのけるが、蟲は後から後から降ってくる。おまけに壁をよく見ると、ぞわぞわとその蟲たちが塊になって移動していた。
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僕が滑らないように慎重に押さえていた壁も全て蟲に覆いつくされていたわけだ。サイズはまったく違うけど、映画「キングコング」に登場した、巨大な蟲たちのうごめく不気味な渓谷を思い出した。
しかし、もうどうすることもできない。「ハエよりはうざったくないしな・・・」と僕はすぐに諦めて、蟲が降ってくるに任せた。まっちゃんは、「こんなんじゃ、一度来れば十分ですね」と辛そうにしていたけど、お前が辛いのは、蟲よりも、最後に降りてきた急斜面の渓谷を、またよじ登らなければいけないことだろう!
ガイドに、「いつもこんななの?」と聞くと、普段はこんなにいないとの答え。何かが原因で異常繁殖したのだろうと言っていた。確かに、残りの4つの渓谷では、こんなに蟲は異常繁殖していなかった。
それにしても、不気味な体験だった。
ちなみに、まっちゃんは、「ここの渓谷は、ウエアノ・ジョージとか、レッド・ジョージとか、ニック・ジョージとか、ジョージって人の名前が沢山ついていますけど、有名な探険家ですか?」と質問してきたので、「ジョージじゃなくてゴージだよ!」と言い返したら、「え、ゴージ?でゴージって誰ですか?」とまた言ってきたので、ゴージは人の名前じゃなくて、渓谷のことだ、バカ」と言うと、「へ~」と無表情で関心しながら、ビデオをまわし続けていた。
お前そのシーン使えよな。

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