昨日は、昔勤めさせてもらっていた、産經新聞の上司と食事をした。当時はデスク、今は写真報道局の局長。新聞社時代に、唯一人間としても、カメラマンとしても尊敬できる人だった。写真に対する思いを良く語り合った。言い合いもした。この人がいるから、ここにずっといても良いと感じていた。
当時の新聞社のカメラマンたちは、自分にとっては、「職人」だった。何でこんな事できるんだって驚きの連続だった。「職人」たちは、自分を売り込む事なんて苦手な人たち。ただ、黙々と、当然のように仕事をこなす。しかし、その仕事が時には本当に「神業」だった。それがめちゃくちゃかっこいいと感じた。
でも、自分は「職人」になることはできなくて飛び出した。もっともっと、好きなモノを撮り続けたいと思ったから。そんな事を考えながら、またその上司と、「カメラマンとは」というテーマで話合った。お店の営業時間が過ぎてしまたので、外に出されたけど、もしそれが無かったら、延々と語り合っていたかもしれない。
最後に、「お前もまだまだ熱いな」と笑われた。今の自分の撮影スタイルを知る人からすると、想像すらできないような一言。
今年、そんな上司が、撮り続けていた鎌倉をテーマにした本を出版した。「春夏秋冬 鎌倉めぐり」新人物往来社 文:宮田一雄、写真:渡辺照明。
「お前と違って、この年になって、やっと一冊出せたよ」と照れ笑いして、渡してくれた。「サインして下さいよ」と頼むと、「ああ、そうか」と言って、何かを書いてくれた。そのサインを探したのだけど、どこにも見当たらない。「あれ?サイン無いですよ」と訪ねると「前じゃないよ、後ろだよ」と言われ、裏表紙の内側を覗くと、「越智隆治様 これからもよろしく。やっと一冊出せました。渡辺照明」と本当に小さな文字で遠慮がちに書かれていた。
出版、おめでとうございます。