INTOTHEBLUE 水中写真家  越智隆治

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バハマ ドルフィンクルーズ

2006年バハマドルフィンクルーズ 撃沈クルーズ怪我の真相

2006.07.17 / Author.


撃沈クルーズで僕の身に一体何が起こったのか?その真相を公開。

<船上編>
 2006年7月16日、5週間のバハマドルフィンクルーズも終了し、本日帰国。本来なら「無事に」と書きたいところだけど、今回は左足親指の付け根にできたフィンズレが雑菌にやられて化膿。まるでサイの足のように腫れ上がってしまった。フィンズレでできた水ぶくれから膿みを出すために開けたほんの数ミリの穴を、1日消毒せずにいただけで、あっという間に親指だけでなく、左足全体がパンパン。クルーズ初日のことで病院にも行けず、船上での応急処置もそれで正しいのかどうか判断しかねるような荒療治。まず、穴を広げてさらに膿みを出すために、キャプテンスコットに差し出されたカッターの歯で自分で傷口を切り広げた。歯を差し出した時のスコットの嬉しそうな笑顔は今でも忘れられない。そしてキャプテンロビンから「出せるものは全部絞り出せ!」と言われ、開けた傷口を、これまたみずからしぼり出す。船には幸い飲み薬タイプの痛み止めと、強い抗生剤が置いてあったので、それを毎日飲み続けた。それくらいはまあ、誰でも普通にやることだと思うんだけど、ロビンはさらにアンディーに「バケツに熱いお湯とそれにブリーチ(漂白剤)と重曹をまぜたものを作って」と指示。そして「これに15分間足をつけて、さらに傷口から出るものを絞り出せ」と言ってきた。ゲストで乗船していた看護士のモーリーは「冷やした方が良いと思うんですけど...」と不安気。ミナも彼女の意見に同意していた。しかし、キャプテン命令なので僕はロビンの指示に従った。下船してアメリカの病院に行くまで、毎日朝と夜にそれを行ったおかげで、僕の左足の毛は、ほとんど溶けて無くなってしまったし、傷を切り開いた部分の皮膚は、真っ白になって完全に死んでしまったようだ。ロビンに足の毛が無くなった事を告げると、「そんな濃い液は作ってないから、それはテーピングのテープではがれたんでしょ」と言う。でも明かに液のせいで足の毛は全部抜けている。翌日さらに毛が抜けたので、「本当にこれで大丈夫なの?」と聞くと、さすがにロビンも、「アンディー、これどんな割合で液作ってるの?あんたちゃんと薄めてる?」とアンディーに聞くとアンディーの回答は『Oh, You know me.』だった。しかも笑顔で。しゃれになんない(笑....)。
 結構傷が痛むし、足をその液体につけておくのが辛かったので、一晩だけ、海友に添い寝していて、眠ってしまったとウソをつき、さぼった翌朝、ロビンは朝顔を合わせても、目も合わせてくれない。しょうがなく近くに行って「昨晩は眠くて起きて来れなかったんだよ。ごめんね。でも足の腫れはちょっとだけど引いたみたいだから」と言うと「毎朝毎晩やらないと雑菌がちゃんと出せないからどうなっても知らないわよ」と厳しい一言。で「今朝もやるの?」と聞くと「当然」といってまたアンディーに液体を作らせていた。もちろん、かなりブリーチは薄めてもらったけど。
<病棟編>
 腫れが引かないまま、下船してすぐにウエストパームビーチのSt. ●erry 総合病院の緊急救命病棟へ。ドルフィンドリームのクルーは明日にも出港で、忙しいため、同じ海域でイルカの個体調査を行っている船ステネラのキャプテン、ピーターが病院まで車で連れて行ってくれた。「開業医ではなくて、総合病院だから、時間がかかるよ」と言われたので「日本も結構待たされるから大丈夫」と安易に応えたのだが、受付してから3時間が経過してもまだ名前を呼ばれない。朝9時過ぎに病院に来て、すでにもう1時になろうという頃、やっと名前を呼ばれた。しかし、それはナースによる初見だけで、さらっと終了。また待ち合い室に戻されて1時間。もう面倒だから帰ろうかなと思った頃にやっと診察室に通された。ピーターには「ごめんね、時間かかりそうだから用事があるなら帰っていいよ」と何度も言ったのだけど、「ドクターに会うまではいるよ、大丈夫、約束は4時からだから」と言ってこの間づっと一緒につき合ってくれた。本当に良い人だ。
  別のナースに診察室に連れて来られてさらに30分してやっと女性のドクターが姿を見せた。ピーターと僕で傷の症状、それに明日朝には日本に帰らなければいけないことを報告した。ドクターは「それじゃあ、レントゲンを撮ってみます。でももし中に膿みが溜まっているようなら、帰国することは諦めてください。それから抗生剤の点滴も打ちましょう」と言っただけで、傷自体はほとんど一瞥しただけだった。それからすぐにレントゲン撮影してくれるのかと思ったら、さらに15分ほど待たされると、今度は支払いをどうするか確認のために会計担当の人が姿を見せる。ここの病院には、黒人、メキシコやバハマからの移民、それに不法就労者なども多いため、支払いの確認が厳しいようだった。そして、クレジットカードでの支払い、保証人としてピーターの住所などを確認して部屋を出ていくと、またしばらく誰も入ってこない。やっとこの部屋に通したナースが注射を打ちに来た。そのときに彼女は「もうレントゲンは撮った?」と質問してきた。「まだ、支払いの確認の人が来ただけだ」と言うと、「あら、まだなのね〜」くらいなこと言いながら彼女はまた部屋を出ていく。それからまた15分くらい。ピーターもそろそろ帰らなければいけない。僕は「本当にありがとう」と言って、チップを渡そうとしたが、「友達が怪我してるのを助けてるだけなのだから、受け取れない」と言われ断られた。そう言うと思って「生まれたばかりの女の子のお祝い、あげてないし」と伝えたが「じゃあ、今度ビールでもおごって。そんな事より最後までいれなくてごめんね」と握手して彼は部屋を出て行った。本当に良い人だ。
  やっとレントゲン技師が来て足のレントゲンを撮る。待ち合い室や診察室よりもクーラーが効いていて、足の痛みよりも体の冷えの方が耐えがたい。ここの患者さんたちはこんなんで大丈夫なのかなと思うくらい寒い。レントゲンを撮影すると、また同じ診察室に戻されて、最初のナースが抗生剤の点滴をセット。そのシーンを写真に撮ってもらった。僕が「眠りたいんだけど」と言うと、部屋の電気を消してくれて、シーツをかけてもらった。多分これで部屋のドア閉められたら、完全に忘れ去られてしまうんじゃないかって感じだったんだけど、彼女はドアは空けっぱなして部屋を出て行った。
 緊急救命病等の最前線にある診察室だったので、明いたドアからは、救急車で運ばれてくる重傷患者(多分ほとんどが交通事故)が後をたたない。頭からつま先まで、全身をバンドで固定されてる人や、脳天からめちゃくちゃ出血してる人、隣の部屋からは激しいうめき声が聞こえてくる。僕はそのドアからまるで映画のシーンを覗き観るように、その光景を点滴を受けながらベッドの上から眺め続けていた。警官が二人、流血しながら暴れる男性を僕の目の前の部屋に後ろ手にしたまま運び込んだ。その男の頭をベッドに押し付けて大人しくさせようとしている。男は後手にされたままもがき続けてる。「何なんだよ、これは〜」と思いながら、様子を見ていた。もしこの男が警官の拳銃でも奪って逃走して隣の部屋の僕を人質とかにとったらどうなるかな〜。点滴打ったままで、足何もシップつけないでそのままだし、足出まといの人質だからすぐに解放されるか、すぐに殺されるかするのかな〜とか色々想像してしまった。
 観念したのか、やっと男が落ち着き、警官が一人だけ部屋から出てきて向かいの部屋の暗がりにいる僕と目があった。僕が笑顔を見せると、向こうもやれやれ大変だったよという顔をして見せた。「君はどうしたの?」と聞かれたので、「いや〜、あの〜、水ぶくれが化膿したんです」と言うと「え、水ぶくれ?緊急病棟に水ぶくれ?」と言って大笑いしていた。ジョークだと思ったらしい。まあ、確かに今までのこのドアを通して観ていたシーンを思いかえすと「あの、場違いだから帰っていいっすかね」とナースに告げた方が良いかなくらいな感じだった。
 点滴が終了しても、しばらく僕は暗い部屋で放置されていた。血が逆流し始めてる。トイレにも行きたいし、どうしようと思って、部屋を見回すと、ナースコールがあった。試しに押してみると誰かが「どうしましたか?」と応えてくれ。「あの、点滴終わったみたいなので、外してもらいたいんですけど」と言うと「わかりました、すぐ行きますね」と言う返事。「あ〜やっとトイレ行ける」と待つこと15分。誰も来ない。再度ナースコール。「どうしましたか?」多分同じ人だ。....「いや、だから点滴外して下さいって、血が逆流してきてるんですけど」。「わかりました。すぐに行きますね」という返事からまたまた15分。誰も来ない。あれは、音声メッセージか!とちょっとむっとしながら、しょうがないので点滴の袋を引っ付かんで、傷口をシップも何もしないまま、トイレへ直行。その後、その格好のままでナースセンターに向った。ナースセンターは僕が点滴を受けていた部屋のすぐ側だ。僕を担当したナースもそこにいて、僕のその姿を見るなり「あらあら、ミスターオチは、早く家に帰りたいらしいわね」とか言ってる。「当たり前だろ!」って思った。でも英語でどう突っ込めばいいのかわからない。
 彼女は僕と一緒に部屋に戻ってすぐに点滴を外した。そしてと〜っても適当に消毒して塗り薬して包帯まいて、これで終わりかと思ったら、「松葉つえを渡すのでちょっと待っててね」と言う。「え〜、そんなものいらないよ」と言うと「日本までの帰国中、極力足を上げ続けて下さい。でないと直らないわよ」と厳しい一言。「だったらもっと迅速に処置してよ」と思った。
 結局それだけの処置で、朝9時過ぎに病院に入って、病院を出れたのは午後6時。9時間近くも病院にいたことになる。
<追記>
  病院で処方せんをもらって、ウオルグリーンというチェーンの薬局店に行って抗生剤と痛み止めの飲み薬を買う。マックやケンタッキーと同じようにドライブスルーがあって、そこで車から下りずに薬を受け取れる。僕がもらった鎮痛剤はかなり強烈らしく、其の手の人たちからは、ハイになる薬として重宝がられるらしい。だから処方せんが無いと手に入らない。食事後、ホテルに戻って飲んだのだが、なんだかとても気持良くなって、くらくらと目眩がしてきた。翌朝、何も食べずに空港に向う前に薬を飲んだ。すると飛行機の中で後頭部に鈍痛を感じ、吐き気を感じる。あまりに強烈だったので、それ以降、帰国するまで鎮痛剤を飲まずに我慢した。
  帰路、成田の入国手続きの場所がすごく混んでいた。でもプライオリティーレーンがあるので、僕らは並ばずに済んだ。プライオリティーレーンには、妊婦、小さな子供のいる人、けが人、が優先される事を告げる絵の看板がある。それ見ながら、松葉づえの夫に妊婦の妻、それに暴れん坊の2歳児と全て当てはまる、ばりばりのプライオリティーファミリーである自分たちにちょっと優越感を感じながら、なが〜い列に並ぶ人たちを「ふふんっ」って感じでチラ見した。はっきり言ってバカである。
 帰国してからも毎日病院に行って点滴打ってるんだけど、日本の病院の待ち時間がまったく気にならなくなった。ちなみに、帰国して最初は「入院」とか「手術」とか言われたりしていたのだけど、血液検査の結果、手術も入院も免れた。

皆のコメント
ご無沙汰です。今回の記事、あまりに面白くてちょっとコメントしたくなりました。とくに、警官とのやり取り。ここ最高!
話した警官は黒人でしょうか?独特の笑い方で「水ぶくれだってよ・・・ひーっひひ!」と腹かかえて出て行くさまを想像しました。きっと署に戻ってからも、ファニージャパニーズの話は広がってるはず。
にしても、傷口に漂白剤とは・・・それって正しいの??
by ジョジョ (2006-07-20 10:51)
あーーーーーもーーーー!!
会社でゲラゲラ笑えないのが、超辛かった!!(;`O´)←こんな顔になっていたはず。
けっけけ、もう一回家で大笑いしながら、読ーもーおっと!!
面白すぎです!!
by TAGO (2006-07-20 12:00)
まじ?!フィンずれ水ぶくれ化膿であんな松葉杖にまでなっちゃうの!!
タカジさんいちいち突き抜けてていいです^o^ まじで お大事に☆
by ゅ*^^*ゅ (2006-07-20 12:33)
ジョジョ、久しぶりだね。元気?そんなに面白かった?話した方がもっと面白いんだけど。警官はどっちかって言うとラテン系の人だったよ。帰国してお医者さんに聞いてるんだけど、「昔ならどうだか知らないけど、今はそんな方法知らないですね〜」とあっさり言われたよ。
TAGO、面白い?今後はこういう文章中心に活動しようかな?でも体験談ばっかだからすぐにネタはつきそうだけど。過去の話もチェックしてみようっと。でも、同じような症状出て、数日後には死んじゃった人もいるんだって。だから結構シャレにならなかったのは事実なんだよね〜。
ゅ*^^*ゅちゃん、そうだよ〜。小さな傷も油断大敵という教訓を得た出来事だったよ。 ゅ*^^*ゅちゃんも海では気をつけてね。マジやばいよ。
by shark (2006-07-20 14:00)
ほんとおもしろい!(あ、文章がね、けがは笑い事じゃないねっ!!)
あややが破傷風で亡くなった人の話をしてたけど、
まさか2週後に隆治さんがそんな状況になっていたとは。。。
私はmixiでバハマ日記をつけているところです。
よければミナに言って見てみてください〜
越智さんネタも書かせてもらってます!!
バラされたくないネタがある場合は、お早めにご連絡ください(笑)。
あ、ミナになんて怒られたか、書いてないね〜
今度直接聞いちゃおうっと。
by さな☆ (2006-07-21 12:20)
ありえません!!!!本当の傷に漂白剤と重曹にお湯だなんて!!!
ひとつ質問です、スコットが差し出したカッターの刃は、アルコールなり火なりで消毒されてたのでしょうか?(元看護婦の素朴な疑問)
船上ではキャプテンの指示に従わざるを得ない!?
命にかかわらず何よりでした。ミナちゃんの心配が心をさすわ~。
(初めてこのページを読みましたが、刺青ネタ、もっと早く読んでおけばよかった・・・・。面白ネタがあったのに・・・・)
by yuki (2006-07-21 21:57)
さな☆ちゃん、そうなんだよ〜。日本のお医者さんからも良く生還できたって言われたよ(笑)。まあ、直りも早いし、大丈夫みたいだよ。ばらされたく無いネタなんて無いので、大丈夫だよ〜。
yukiちゃん、やっぱありえないんだね〜。歯は、患部消毒してるから、歯の消毒の必要は無いだろうって。そのまま切っちゃったよ。やっぱり自分で自分の皮膚切るのは嫌だよね〜。まあ、航海中はキャプテンが法律だからね。でも、別に従わなくてもいいんじゃない。自分にも多少でも知識があれば、自分なりの対処をしたと思うけど。船には看護士の人も乗っていて、その方法にはとっても疑問視してて、ロビンとかが寝てから、「とりあえず氷で患部冷やしましょう」って患部冷やしてくれてたんだけどね。面白ネタって何?
by shark (2006-07-24 03:37)
1. イギリスで。刺青している人が多い。老いも若いも男も女も。で、漢字の刺青もあり。かっこいいと思うものもあれば、???というのも。その一つが「台所」。腕に縦に。「台所」。友達と、「意味わかってんのかね?それkitchenて意味ですよ。と教えてあげようか。」と話してました。
2. 病院で。お腹に鞍馬天狗の刺青。聞いてるだけだとちょっとかっこいい感じ?でも、実物は、しわしわのよれよれな鞍馬天狗。刺青入れた当時は恰幅が良かったらしいけれど、入院当時はすっかり痩せてしまい、それにともないお腹の鞍馬天狗もよぼよぼに。かなり情けなかった・・・・。
3. 病院で。この方は、腕だったか背中だったか?忘れちゃいましたが、未完成な刺青。「なんか途中ですね?」と伺ったら、「何とかがんばってきたんだけど、どうしても痛みに耐えられず、あきらめました・・・・。」って。ほんとに、もう一息の未完成刺青でした。「だったら、もっと早くにやめればよかったのにね。」とスタッフと話したのはいうまでもありません。
以上、刺青で思い出した、私の持っている面白ネタでした。(少しは笑っていただけましたか?)
そうだ、越智さん、フィンソックスをお願いした私からのメール届いていますか?もし届いていなかったら、ここにでも、HPのBBSにでも、お知らせください。よろしくお願いします。
by yuki (2006-07-24 21:52)
台所ってどういう意味で入れたんだか知りたいね〜。俺も途中でやめちゃったのは何回か見たことあるよ。ちなみにその一人は、ヤップに住むヤップライズのオーナーガイドの大介君です。フィンソックスの件はオーダーしました。大丈夫だよ〜。
by shark (2006-07-26 14:34)
越智さん、こんばんは。
松葉杖姿の写真を見て、どうしたのかと心配していました。
荒療治にもめげず(?)、とりあえず、ご無事でなにより!
そうだ、海友クンには、「おめでとう!」の一言を♪
パパの方が喜んだ一日なのでは?楽しい一日になりましたか??
by Yayoi (2006-09-27 23:20)

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