INTOTHEBLUE 水中写真家  越智隆治

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トンガ ホエールスイム

2019年トンガホエールスイムweek7 クジラが一番少ない週。右胸ビレが動かないクジラ

2019.09.22 / Author.Takaji Ochi

「今年は、例年よりクジラの個体数が少ない印象?」これは今年トンガのみならず、他の南半球の国、地域でも良く聞くキーワードになっている。トンガのババウ諸島だけであれば、船の数が増えたからとか、水温が例年より高いからという局地的な要因しか上がってこないのだけど、どうやらそんな事だけでは無いらしい。

ついこの前までトンガタプのオペレーターでガイドとして働いていて、今週からババウへ移動してきたガイドの話では、それはトンガタプやエウアでも同じで少ない印象があるのだそうだ。

トンガ以外の周辺国でも、昨年は沢山いたのに、今年は1頭もクジラの姿を見なかったという報告も耳にした。

実際、個人的に毎年、親子の水中写真を撮影して7~8週間で、45組〜50組弱の親子を識別していたが、今年はweek7が終わった時点で識別できた親子は、30組に止まっている。しかも、今年は、3隻出している週が多く、利用している船の隻数も過去最高。そう考えると、もっと少ないと考えていいのではないかと推察する。

南氷洋から暖かい海に移動して来る途中に餌場があり、今年はそこに多くに餌があって、そこからクジラたちが北上してこないというような話も聞いた。実際のところはそれが理由かどうかはわからないけど、とにかく様々な噂が出るくらいに少ない印象。

そんな年の中でもweek7は、多くのオペレーターや船長、ガイドたちが、「今週は、記憶にある中でも一番厳しい週だった」と口をそろえて言うくらいにクジラが少ない週になった。それでも、毎日ゲスト全員に、どうにかクジラを水中で見せてあげることができた。

9月16日(月)  

week6からの延長メンバーと、week7の先入りメンバーで海へ。ネイアフの港には、大型クルーズ船が寄港していた。

多くの船が南で親子を捜索している中、透明度の高い西の外洋側でクジラを探す。やはりなかなかブローが見つからない。今週はかなり苦戦するかも・・・。ブローがまったく見えない海を見渡しながら、少々不安になった。

そんな中、ペアと泳いでいた船からシェアしようと無線連絡が入り、そのペアにエントリー。今年は、昨年に比べ物にならないくらい透明度が高い。特に今週は驚くほどの透明度だ。そこにクジラに向かって放射状に太陽光が差し込む。

水深は10mくらいだろうか、透明度が高いからそれよりも浅く感じる。潜りたい衝動にかられるが、シェアしてもらった船から、潜ると逃げてしまうと連絡をもらっていたので、水面でじっと浮上してくるのを待った。

徐々に水深が浅くなる。僕らは浅い方にいるクジラ(多分メス)の頭の側で待っていたが、不意に勢いよく泳ぎだした。するともう1頭(多分オス)もそれに続くように慌てて泳ぎだしたかと思うと、2頭でダブルブリーチングをした。水面でも目の前だったので、船の上からダブルブリーチングを撮影したかった。

僕らの浮いていた位置が頭の真上すぎたから、クジラが慌てたのかもしれない、次からは、少し前気味にポジショニングして浮上を待つと、まず下にいたクジラ(行動から多分オス)が先に浮上し、少ししてもう1頭(多分メス)が、反対方向に浮上した。

要するに僕らを挟んでクジラが両サイドにいる状態になった。するとオスと思しき先に浮上したクジラが、踵を返して、後から浮上したメスとお思しきクジラの方へとついて行った。

9月17日(火)
  
week7のメンバーが全員揃い、2隻で海へ。先週末からクジラの個体数が少なく不安になっていただけでなく、雨風も強く遠出してクジラを探すのが難しい状況だった。それでも、出がけにスワローズケーブ近くで親子と泳いでいる船に遭遇し、即座に順番待ちをした。こういう天候では捜索範囲も限られるので、まずは順番待ちをして、その間にクジラを探す。フンガ島沖合で、2つのブリーチングが同時に違う場所で見られたので、そちらに急行。

ブローを確認して接近すると、3箇所で同時にブローが上がる。どのブローを選択するか悩んだが、一番個体数の多いブローへアプローチした。止まってはいないので、前にドロップしてもらい2度ほどクジラを確認できたが、撮影は証拠写真程度。

その後もアプローチを試みるが、その後はなかなか近寄らせてもらえず。
ランチを食べて、順番待ちしていた親子に。

回数は少なかったけど、全員が親子と水中で遭遇できた。

なんか、前にも見たことある親子だなと思ったので、ホテルに戻って個体識別表で確認してみたら、week5の9月5日に遭遇していた親子だった。しかも泳いだ場所もほぼ同じエリア。11日間の間、一体どこに行っていたのかな? 

下は、9月5日に撮影した同じ親子の写真。

9月18日(水)

雨はおさまったが、風はまだ強い。それでも快晴なだけで気分は違う。この日はフンガの外洋側で、運良く朝早くに親子とエスコートを発見。2隻でシェアをして泳ぐ。最初は親子とエスコートだったが、すぐにエスコートは別れてしまい、親子だけになる。

一度泳いだ後は、かなり移動したりはするが、この日は確認できる限りでは、この親子がベストな感じだった。まだ時間もあるというのに、多くの船が周りで順番待ちする状態になるなかで、しばらくは2隻でシェアしながら親子と泳ぐ。

最初にガイドとして見極めなければいけないのは、母クジラが一体どれくらいの距離まで近づくのを許してくれるのか、それにどの方向からアプローチしたら、気にせずにいてくれるのかなど。

最初のアプローチの様子から、この母親は側面や特にテール側に人がいるのを嫌がる様子だったので、なるべく横からではなくて、前に回り込んでアプローチするように心がけた。前からのアプローチがうまくできた時には、かなり近くまで寄らせてくれた。

本来なら、もっと時間をかけて親子、特に母クジラに僕らが害の無い生き物だということを認識してもらいたいのだけど、これだけ順番待ちしている船が近くにあると、なかなか思うようにできない。

先に泳ぎ終わった1隻の方は、その後、目の前で連続ブリーチングを目撃して、船上からのパフォーマンスも満喫した。

9月19日(木)

この日は、1隻のエンジンが出発直後に止まってしまい、もう一隻にゲスト全員を乗せてクジラを探すことに。

エントリーの順番を決めるのがなかなか難しかったけど、クジラの少ない今の状況で、エンジントラブルで2隻のゲストを1隻に乗せる緊急事態では、迅速に状況を整理して、少しでも早くクジラを探し、無線で良いクジラがいたら、順番待ちをするなど対応をしなければいけない。

とにかくクジラを探すことに専念したが、やはりこの日もほとんどブローは見つからず、他の船に連絡しても、良いクジラはほとんど見つかっていない状況だった。

トラブルで出遅れたため、泳げている少ないクジラたちの中から、外洋にいるペアに順番待ちをして、あまり遠くにいかないで待機する作戦に。待つ時間は長いけど、荒れてる海に捜索に出ていて、順番に間に合わないよりは、クジラも少ないし、この日は人数も多いため、安全策を取る事に決めた。

しかし、順番待ちしていたペアは連絡をもらった時から、海中に止まっているから見られるけどあまりよくは無いという状況。しかも徐々に動き出してしまい、荒れた海域へと向かって行ってしまった。

やばいな・・・。この状況で何も見せられないで帰るのは。と思っていたら、船長が、別の船が着いていたシングルのクジラが、僕らが待機していた目の前で止まって歌いだしたからそちらに入ることにすると言ってきた。

シンガー、しかも浅い海中で止まって歌っているという。しかも、ほとんどのゲストがシンガーを見たことがなかったので、歌っている状況が肉眼でもはっきり見える透明度と水深で、回数は少なかったけど、初シンガーを喜んでくれていた。

こういうトラブルは海ではつきものだけど、これで最後まで何も見せられないと思うと、本当にゲストの顔をまともに見れない。普段は「自分のクジラを探す」と並ぶことを嫌がる船長が、機転を利かせて待機の判断をしてくれたことと、目の前で歌いだしてくれたシンガーに感謝した。聞き慣れた僕には、歌はいびきにしか聞こえなかったけど(笑)

P1262416

9月20日(金)

2隻に分かれて海に出る。エンジンがいかれた船はもう使いたくなかったので、1隻は新たにチャーターした。2年振りに乗船した船で、船長も久しぶりだ。この日も、なかなかクジラのブローが見つからない。

あまり多くを語らない船長なので、こちらから無線ではどんな感じ?と聞いてみると、すでに、親子に順番待ちしてくれていると言う。しかし、まだ止まっていなくて、順番も5番目だから、とにかく自分たちのクジラを探そうということで、さらに捜索を続けていたら、もう1隻の方から親子を発見して、泳ぎ始めたと連絡が入る。最初は止まっていて、2番目に並んだと船長から伝えられたので、少しほっとして、クジラを探しながら、そちらの方面にゆっくりと進んでいった。

しばらくして、再度状況を確認すると、5番目に並んでいた方の親子は、まったく止まらず、外洋の荒れた海へと移動してしまったとのこと。しかし、2番目に並んだ方は、すでに6回エントリーしたと報告が来た。え?この時間ですでに6回?止まっているにしては、回数が多すぎる。少し嫌な予感がして、再度連絡を取ってもらうと、どうやら止まっているわけではなく、ゆっくり移動しているので、前にドロップして泳いでいるとのこと。しかも、子クジラが小さくてそんなに寄れず、しかも母親は、逆光側に向きを変えるのでなかなか良い写真は撮影できないとのことだった。

そうなると、のんびりはしていられない。もう一隻からも早く来いと連絡が入っていたので、すぐに現場に向かい、シェアしてもらうことになった。

こちらの船長は、かなり慎重にアプローチして、親子が止まった。チェックで海に入る。10mくらいには寄れますと、別船に乗っていたスタッフから連絡をもらっていたが、とにかく最初なので、うっすらクジラの影が見えた時点で止まって確認の手を挙げた。

しかし、ゲストが到着する前に動き出してしまった。

これは、厳しいな・・・。

その後は止まるようになったが、なかなか寄れない。テール側や側面からアプローチすると、撮影できる距離に到達する前に泳ぎだしてしまう。一度見ていて面白かったのは、テール側からのアプローチのとき、母クジラだけが気づいたのか先に泳いでいくのに、子クジラだけがその場で気づかなくてしばらくぼ〜っとしながら浮上していたことだ。どうやら母クジラは警戒心が強いけど、子クジラは能天気そう。船長に、止まっている親子の前側からエントリーさせて欲しいと頼み、アプローチを試みた。すると、しばらくは止まったまま、動かないでいてくれた。これなら徐々に距離を詰めればもう少し近くに寄れるかも。そう思ったときに、子クジラが浮上して、こちらに向かって来た。

それを見た母クジラがすごい勢いで子クジラを奪い返すように、連れて逃げ去ってしまった。やっぱりこの子クジラの能天気な性格のせいで、母クジラも気が気ではないのかもしれない。

まるで、「知らないおじさんに着いていっちゃだめでしょ!」とでも言ってるかのようなそんな感じだった。慌てて泳ぎ去っていく親子を見送りながら、そんな悪いおじさんじゃないから、もう少し近くにいさせてよ〜と心の中で独り言ちた。

その後、他の船が加わり、何度かアプローチした。何度目かに、エントリーすると、船のほぼ真下に止まっていて、しかも子クジラは、息継ぎの浮上のときに、完全に僕らめがけて浮上してきた。

それに気づいた母クジラが子クジラを“回収”しに、僕らの真下を通過して泳ぎ去った。

海中で静かに様子を伺っていると、お母さんクジラにも子クジラにも様々な性格があって、面白い。写真を撮影する前にそういう親子の性格なども眺める余裕があると、よりクジラたちと海中にいる時間が楽しめるのだけど・・・。

9月21日(土曜日)

この日、week7のほとんどのゲストが帰国したため、スタッフと残ったゲストの少人数で海に出た。

送迎があったため、9時出港。

すでに7時に出港した多くの船がクジラを見つけていて、僕らはその順番待ちをすることに。
同じ海域で、シンガー、シングル、ペアがいるので順番に回ると船長に言われた。なんと効率が良いのか、この日は遅く出て正解だったかもしれない。

しかも、どれも止まらなくて泳げてはいないが、南では、親子5組が確認されていると言う。昨日見た子クジラも小さかったが、この前の満月前後に生まれた子クジラが多く姿を見せてくれているかもしれない。クジラたちが戻ってきてくれるといいのだけど。

最初に泳いだのは、歌ったり、歌わなかったりしてるシンガーとのこと。他にも順番待ちしてる船があるから、潜るのは無し。でも、目の前に浮上して、しばらく近くで泳げて、すぐ近くに潜って止まるとのこと。

期待してエントリーする。しかし、なにやら様子がおかしい。身体は全体的に明るいグレーをしている。若目のオスだ。

海中でバランスは取っているのだけど、何故か左の胸ビレだけを動かしている。右の胸ビレはピクリとも動かない。最初は、そういう癖なのかと思ったが、浮上するときも、ぎこちなく左胸ビレだけを動かして、右の胸ビレは同じ位置に固定されているかのようにまったく動かない。

しかも浮上してきたクジラの右側、特に右胸ビレには、無数のクジラジラミが付着していた。

どうやら、右の胸ビレが骨折でもしたのか、まったく機能していないようだった。

2度目にエントリーしたときには、左側面に回り込み、そちら側の様子も見てみた。反対側にはクジラジラミは付着していなかったが、右胸ビレの内側には、さらに多くのクジラジラミが付着しているのが確認できた。

テール側もクジラジラミはいなくては黒い。つまり、もともとグレーの明るい体色をしていたわけではなく、傷ついたために、皮膚がもろくなっていて、前側だけ、グレーになり、その上にクジラジラミが付着しているからそんな風に見えたようだ。

それにまだ若いクジラだからなのかもしれないが、フジツボなどの寄生生物は逆にまったく見られなかった。

浮上してすぐに沈むのは、体力が無いからなのかもしれない。旅の途中で何かの要因で右胸ビレを痛めて、ここまでたどり着いたのだろうか?

この子は、また南氷洋まで戻っていけるのだろうか?餌のない暖かい海域まで来ても、この身体ではヒートランにも加われないだろうし、交尾なんかできるのだろうか? あ、でもまだ交尾するにはまだ若すぎるのかな?とか。

右皆ビレが動かないで、バランス悪く浮上して、すぐ近くに潜ることを繰り返し、時折歌を歌う。今年のクジラたちの歌声には、「ワオ!」というフレーズが必ず含まれていて、今までは可笑しくて笑ってしまっていたのだけど、この子が同じような旋律で歌っているにも関わらず、何故か助けを求めて必死に歌っているような、物悲しい歌声に聞こえてきた。

その場で10分くらいで浮上を繰り返しているので、何度でも入ろうと思えば入れるのだけど、あまり泳ぐ気になれず、先にいた船より早くに別の順番待ちしているクジラの方へと移動した。

その後は、かなり大きなシングルのクジラ、ペアと泳ぎ、最後に右胸ビレの動かないクジラのところに戻り、船上からテールを撮影して、帰路に着いた。

クジラ遭遇がかなり厳しかった週ではあったが、毎日、全員が水中でクジラたちに遭遇できた。考えようによっては、これだけ厳しい週でも、毎日クジラを水中で見ることができるくらいはクジラがいる海、と言うことなのかな。

week7に参加してくださった皆さま、どうもありがとうございました。

◆2020年のトンガホエールスイムに関して◆

2020年のスケジュールは、すでに確定していて、すでに仮予約のご連絡もいただいています。
スケジュールは以下になります。
こちらもご興味のある方は下記contctからご連絡ください!
来年は是非トンガで一緒にクジラと泳ぎましょう!

◆2020年のトンガホエールスイムスケジュール日程◆

week1 8月9日(日)〜8月16日(日)
week2 8月16日(日)〜8月23日(日)
week3 8月23日(日)〜8月30日(日)
week4 8月30日(日)〜9月6日(日)
week5 9月6日(日)〜9月13日(日)
week6 9月13日(日)〜9月20日(日)
week7 9月20日(日)〜9月28日(日)

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文:越智隆治
写真:越智隆治、岡田裕介、樋口諒平、稲生薫子

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