INTOTHEBLUE 水中写真家  越智隆治

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トンガ ホエールスイム

2006年トンガホエールスイム3rd week 殿、ご乱心

2006.08.15 / Author.


ゲスト全員が集合。全員がクジラたちとの水中遭遇を果たしたが・・・、まだまだ続くアクシデントの数々

15日目水曜日
早朝、トンガタプを飛行機が飛び立った時間を見計らって、またモーゼスに電話を入れる。「今残りの全員を乗せて、飛行機が飛び立った」と少し嬉しそうな声で返事がかえってきた。僕は最悪な条件の中でも最善の努力をしてくれた彼らに感謝して礼を言い、電話を切った。今日のスケジュールとしては、まず9時には田宮さんと林さんを乗せたオンゴ操船のフルークがエミさんのガイドで先に海に出て良いクジラを探す。残りの2隻は皆が到着してから10時くらいに僕が8人乗り、トニーが4人乗りのガイドで出発することに。
空港へは僕が出迎えに行く。空港に着くまでの間、バスのドライバーと「遅れたのは残念だけど、今日は天気が良いから、きっと沢山クジラと会えるよ」と話しをしていた。しかし、空港に近づくに従って、不穏で邪悪な黒くもが近づいてきた。「何だよこれ~」と内心思いながらも、皆の乗った飛行機が姿を見せて、今にも着陸する飛行機をこの邪悪な黒雲が飲み込もうとしてるのを見て(の、呪われてるな、この週は)と半ば諦めの半笑いを浮かべていた。
当然のことながら皆辛そうな顔で飛行機から降りてきた。「越智さん、トンガ遠いよ~!」と到着口から出るなり開口一番モリコが叫んだ。(そりゃあ、遠いよね。現地到着まで日本から5日間かかってるんだから)って言おうとしたけど、とりあえず止めておいた。
すぐにバスに乗り込み、ホテルへ。道中皆にブリーフィングを行い、10時に船を出す旨を伝えた。今回、初めて会ったのは、遠井さん、稲葉さん、安部さんの男性3人。残りのメンバーは皆一度は面識のある人や昨年のリピーターだ。リピーターは光一さん、タゴ、まっちゃん。初参加はモリコと光一さんの彼女のエミリー。車内でいろいろ話しをしたけど、一様に盛り上がったのは、「後は頑張ってクジラを探すだけです」と言ったときだけ。後はほとんど放心状態っぽく僕の話しを聞いていたけど、その言葉を僕が発したときだけは、皆が一斉に「お~!」といって笑顔でこぶしを上げたりしていた。(は、早くクジラに逢わせてあげなくては・・)と思った。
チェックインをして、朝食を済ませてジェティーから船に乗り込み出港。この頃には不穏な雲は無くなり、天気も良くなってきた。無線連絡を入れても、2人乗船の船からは何の応答も無い。できるだけ近くでクジラを探しておいてとの打ち合わせをしておいたんだけど、もしかしたら見つかっていないのかもしれない。
後から乗船した4人乗りのボートが、僕たちの乗る8人乗りの船を追い越して行った。しばらく進むと、昨日より少し内湾に入った場所で、昨日クジラを譲ってくれたボートが昨日の親子についていた。他に船は無い。すぐにキャプテンのノーファに、「他にクジラが見つかっていないのなら、まず皆をこのクジラたちと一緒に泳がせてあげて。向こうの船のキャプテンと交渉して」と頼んだ。2人乗りと4人乗りはスピードが出せるから広範囲に探せるけど、8人乗りはスピードが遅いから、探すのは2隻に任せて、8人乗りはどんな方法でもいいからまず皆に水中でクジラを見せてあげることを最優先した。
ババウで唯一のホエールウォッチング船の女性キャプテンのノーファの良いところは、こういうとき、すんなり交渉に応じてくれることと、相手のキャプテンからもオッケーしてもらいやすいこと。今回も「次の向こうのエントリーが終わったら、こちらに順番を譲ってくれるって」と教えてくれた。一番心配していた足の遅い8人乗船の船が午前中から親子クジラと泳げることになった。
しばらく船上から観察。どうやらエスコートは昨日のオスとは違うようだ。あまり役に立たなかったので、母親が見切りをつけて、別のオスをエスコートに選んだらしい。向こうのボートの最終エントリーが終わって、こちらに順番を譲ってくれた。一度にガイド1名、ゲスト4名までしか入れないので、まず最初にタゴ、エミリー、光一さん、安部さんの4人が僕と一緒にエントリー。
皆一緒になってゆっくりクジラの親子に接近する。天気も良いし、内海だけど、透明度も悪くはない。親子とエスコートの3頭の姿が水中ではっきり全身見渡せた。初めてクジラを水中で見た安部さんは、「まるでテレビの映像見てるみたいで、実感が湧くのに時間がかかった」と後で話していたように、クジラたちは目の前でまるでスローモーションのようにゆっくりと動いていた。問題なのは、昨日のエスコートと違い、今日の新しいエスコートはかなりアグレッシブだということ。僕らが親子に近づこうとすると間に入って、接近を阻止しようとする。僕にとってはそれはそれで面白いのだが、安全面を考えると、初めて泳ぐ人とかがいるから多少は心配だ。それに完全に止まってくれにくい。3頭はゆっくり、ゆっくり前進をしている。子クジラはたまに泳ぎながら母親からおっぱいをもらっていた。僕には、ついて泳げないスピードでは無いのだけど、他のゲストにはかなり大変なようだった。とりあえず、皆が付いてこれなくなるまでは一緒に泳ぎ、次のグループに交代することにした。エミリーは「珍しい授乳シーンも見れたし、もう満足」と最初のエンカウンターだけで喜んでいた。
しかし、次のグループを入れようとした瞬間、何を思ったのか、エスコートが母親に激しくアプローチをかけはじめた。もちろん母親は嫌がり、子供は逃げ惑うといった感じになった。水面にも2頭の激しいやり取りで、水しぶきが上がる。どうやらエスコートの方が、「ご乱心」してしまったようだ。「昨日の役に立たないエスコートの方にしておけばよかったのに。守ってくれると信じた人に裏切られたって感じだな~」と僕は呆れて見ていた。皆もその状況を見守り、「あの子供がかわいそう、お母さんが大変な間、私たちが遊びの相手してあげるよ~」とか船上から言っていた。しばらくは乱心の状態が続き、移動し続けるので、エントリーはできなかった。それにどんどんと透明度の悪い内海に入っていく。あまり好ましいことではない。
様子を見ていると、少し後方から別のシングルクジラがブローを見せた。泳ぎ方からして、どうやらこの乱心に加わろうとしてる感じだった。多分オスだ。「このままだと多分、あの親子とエスコートに合流してヒートランになっちゃうかもしれない」僕がそう言ってからしばらくして、ちょっと離れた場所に親子+2頭のオスが静かに浮かびあがった。どうやら様子を探っているみたいだ。暴れまわる前にエントリーしようということになった。透明度が悪いので、かなり接近しなければ多分クジラを見ることはできない。
今回も接近すると、母親がゆっくり移動を始めた。今度は海中では透明度が悪いので一度潜行すると、見えなくなるので、水面で浮上した位置を確認しながら泳いだ。浮上してしばらくは止まっているので、僕は確認できているのだが、後からついてきている皆が全員そろう頃にはまた移動を始めるので、他の人たちはちゃんと見れているのかわからない。
ある場所に来たら、やっと親子が完全に止まった。エスコートの座を奪い合おうとしている2頭も、あまりちょっかいを出していないようだ。(これで皆ゆっくり見られる)と思った瞬間、前の方から激しく泳いでくる人々の姿が。(いつの間にあっちから回りこんだんだろう)と思ったら、何と次の順番待ちをしていた別のボート(マレスキング)からのゲストが5人、海に飛び込んでいたのだ。彼らの姿が見えたとたん、親子はダッシュで移動を始めてしまった。
僕は水面に顔を出して、周囲を見渡した。僕らの船からは、ボートクルーのホリーが、「タカ!今水の中に11人もいる状態だから、すぐにボートに戻って!」と叫んでいる。(え、もどらなきゃいけないのは、後から入ってきた人たちだろう!)と思ったけど、とにかく一度全員を船に戻した。ルールを無視した行為に、ホリーとノーファは激しく抗議をしていた。向こうのボートのキャプテンも、入るのを止めていたようだ。にも関わらず、そのグループをしきっている誰かが、無理やりエントリーさせたらしい。
僕らの順番はこれで終了になってしまうと言われた。自分たちの行為でクジラが泳ぎ去ってしまったのなら納得できるのだが、そうでないだけに納得できない。しかもその原因が次に順番待ちしてたボートのせいなのだからなおさらだ。僕はノーファに「もう一度づつ泳がせてあげることはできないか」と聞いた。するとノーファが、マレスキングの後に順番待ちしているボートのキャプテンに交渉してくれた。「こちらの過失ではなくて、他のボートのゲストが入ってきたせいで、クジラが逃げてしまったので、もう一度泳がせて」という旨を無線で伝えると、次に順番待ちしていたボートのキャプテンもその状況を見ていて知っていたので、了承してくれた。
おかげで、僕らのグループは、もう1回ずつこの親子と2頭のエスコートを水中で見ることができた。
その後は、4人乗船の船が朝から見つけてやっと落ち着いたと連絡の入った親子の方に向かう。すでに2人乗船と4人乗船のボートが交替で海に入りクジラと泳いでいた。この親子は、母親が海中で留まり、子供だけが何度も息をしに上がってきていた。水面で子クジラを追いかけず静かにしていると、かなり向こうの方から接近してくれた。そんな行動を何度もくりかえしてくれるし、母親もあんまり気にせず海中で休んでいるし、僕たち8人乗船の船が加わって4交替になっても、2グループとも2回ほど海の中の親子を見ることができた。多少透明度は悪かったものの、とにかく遅れて到着した全員がクジラと泳ぐことができた。

今日の晩飯のときに、林さんのデジカメが動かなくなったと、悲しそうな表情をしていた。まだまだ少しづつ、この週は何かが起こっている。話しによると、4人乗船のボートは、エンジンが1つ動かなくなってしまっていたそうだ。

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