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Photographers Diary

トンガホエールスイム2018で遭遇した面白&印象的なエピソード3

2019.07.09 / Author.

昨年のトンガホエールスイムでの印象的なエピソードを紹介します。記事:稲生薫子

2018年もトンガホエールスイムが終わった。
「毎年同じ地域に行くのは飽きませんか?」と聞かれることもあるが、6年通ってもなお、毎年、いや、毎日違う景色が見られるから、決して飽きることはない。

むしろ、回数を重ねるごとに、「もっとこういう景色が見たい」、「見たことのないクジラとの景色を共有したい」と、思ってしまうのだ。
トンガにはそういう魅力があると、改めて思った。

海だけでなく、ここ数年は陸上にいることも楽しい。
地元の人たちと交流できる喜びは、わたしがトンガに通いたいと思うひとつの理由だ。

「アナザースカイは?」と聞かれたら、間違いなくトンガ。
トンガ以外に、長年通っている地域がないというのもあるかもしれないが、トンガ人が少し日本人に似ている、いや日本人以上と思うところがあると感じているところもいち理由だ。

それは、「分け合う」という精神。
朝ボートに乗れば、お腹空いてないか?と言って自分の朝食を分けてくれ、ランチタイムには、自分の持ってきた(彼らにとっては主食)を「食べる?」と言って分けてくれる。

おやつにはフルーツをわけてくれ(・・・って全部例えが食べ物)、生きる上で最も重要な「食」を、自分が食べていないにも関わらず、分けてくれるという人種が、あまり多いとは思わない。

(用事があってスキッパーの家に休日に訪ねたら「鼻がいいな(笑)ちょうどいいところに来たんだから食べていけ」と言って、仲間に入れてくれた)

数年前に、とあるスキッパー(船長)が船を操船しながらわたしにいったのは「トンガ人は物をわける民族、それができるからトンガ人でよかったって思うよ」という言葉。

今年、このスキッパーとは一緒にボートに乗る機会がなく、とても残念だったが、会えばお互い声をかけあい、それが海の上だった場合などは、クジラの状況などをわけあった。


(BBQをしていたら、「これも食べていいよ」と持ってきてくれた女の子)

そんな“わけあう精神”に満ちたトンガで、今年わたしが心に残ったゲストとクジラのエピソードを3つほどご紹介していきたい。

エピソード1
「わたしもエスコートに守られたい!」

9月7日(金)、この日は晴の吹く日だった。
エイワカファ島の南東でペア(2頭の大人のクジラ)を発見した。
透明度は最悪に近いが、水中に入って見ると幸いクジラは止まっていた。

今年のトンガ開催期間中は、なんせ透明度の悪い日が続いていた。
確実な理由はわからないのだが、フィジー沖で起きた地震の影響で火山活動が活発になったことだという人もいれば、水温が急激に上昇したからだという人もいた。
とにかく、いずれにせよ、ものすごい浮遊物の量で、撮影者を困られていた。

はじめに入水した時は、しばらく水深の浅いところでペアは止まっていた。
しばらくすると、ゆったりとこちらを警戒しながら、しかし、距離はだいぶ近くを通りすぎていった。


(かなり近いが、透明度が悪いことがわかる。)

なんとか皆撮影はできたが、なんせ透明度がほぼ0に近い。
数回トライして、リリースした。


(海底に戻って行くクジラを追いかけるゲスト)

そのあと、越智さんの乗ったフェニックス号が、ファンガシト島付近で親子とエスコートに追従していたのでそちらに合流。
「クジラは止まっているが、エスコートが親子を守ろうとして人に向かってテールを振ってくるから気をつけるように」という情報がはいっていた。

※エスコートとは、父親ではなく、次の後尾のチャンスを狙ってメスについているオスのこと。

エントリーすると、情報通り親子は止まっていたが、こちらも透明度は最悪。
姿の見えない危険なエスコートを気にしながら親子を撮影していたが、気づかぬうちに真横にエスコートがきていてびっくりした。
どうやら、水深の深いところで親子を見守り、人が近づくと割って中に入る性格のようだった。

わたしたちが海に入った時には、テールを振ってくることはなかったが、ぶつかりそうになるくらい、だいぶ人と近い距離を泳いでいた。

2回目にはいったときには、エスコートを少し誘導して、3頭が綺麗にならんだ姿を見せることができた。
その後は、もう1頭エスコートが入って親子共々止まらなくなった。
あとに入ったエスコートはすぐにいなくなったものの、その後は深場に行って止まるようになってしまってあまり撮影に向かなくなってしまったので、諦めて、別のクジラを探そうとなった時に女性ゲストから出た一言が・・・

「このエスコートめっちゃかっこいい!わたしもエスコートに守られたい♡」

(笑)

「できれば陸上のエスコート探したほうがいいよ!」と、わいわいと会話しながら、スワローズケーブによって帰港した。


(透明度の良かった、スワローズケーブ)

エピソード2
「イルカがハエみたいにみえました」

9月13日(木)、天気の悪い日が続いていたが、朝一番にノースベイに到着し、早速親子を見つけることができた。
しかし子供が生後2週間くらいのすごく小さな子で、母親はかなりナーバス。
一度エントリーしたが、母親の姿もほとんど見えないにも関わらず、気配を感じたのか踵をかえすように旋回。
ノースベイさらに北のベイや沖合まで追いかけたが、いなくなってしまった。
こういう時は、あまり無理に追いかけないようにしているので、次を探すことにした。


(こちらは9月24日撮影)

親子と離れると、わたしたちを乗せた船がいきなり爆走を始めた。
トンガ語の無線だったが、「ドルフィン」と言っているのが聞こえた。
トンガシカ島の沖合で、1頭のクジラと複数のイルカが一緒に泳いでいるという情報が入った。
この内容に関しては、実際は着いてから知ったことだったが(笑)。

エントリーすると、1頭のクジラが水面でゆったりと遊んでいて、6頭〜8頭くらいのシワハイルカがクジラの周りをキューキュー言いながら旋回していた。

「クジラがでかすぎで、イルカがハエみたいに見えました(笑)」と興奮冷めやまぬ様子のゲスト。

のちに、もう1頭大人のクジラが入ったことでスピードがあがりイルカも離れていったので私たちもその場を離れたが、とても印象的なスイムになった。

エピソード3
「やっぱりオーシャンズ金子はモッている!?」

最終週、人気番組の「世界の果てまでイッテQ!」の取材が入っていた。
ナビゲーターはオーシャンズ金子さん。
最近では、世界各地で海の大物生物と出会うという企画も人気だ。

9月27日(木)、この日がテレビロケの最終日。
今回はヒートラン狙い企画でトンガに来ていた取材班だったが、それまでの日は、ヒートランには遭遇するものの、思ったような取れ高ではなかったそう。

最終日の朝、越智さんと取材班を乗せた船は、「最終日だから、いいヒートランに遭遇したいな〜」と残し、朝6時に出港。
わたしとゲストを乗せた船は朝7時に出港した。

2隻とも、透明度の良いエリアに向かうことにしていたから、そのエリアで会えて、かつ、良いクジラがいたら分け合えばよいなと思って出港したが、わたしたちの出港から30分、取材船から「ヒートランがすごくいい!」と連絡がはいった。

スキッパーに伝えると、目の前に見えるすべてのブローとクジラを無視して(笑)、全速力で走り始めた。
連絡をもらったエリアに到着すると、ちょうど取材船がヒートランの中にアプローチをしており、越智さんと、オーシャンズ金子さん、それにイッテQの小谷カメラマンが海に飛び込んでいた。

私たちもすぐに準備をして、待機。
ヒートランになった場合は、2隻(やそれ以上)が協力して、クジラへアプローチすることも多く、今回も2隻が協力しあう形をとった。

入水すると目の前をクジラがどばーーと流れた。
「さすが、オーシャンズ金子もってるなーー!」と船に戻ったゲストが叫んだ。

昨年の25頭級のヒートランには数及ばなかったものの、まとまり感としては去年に匹敵するくらいの量で、感無量。

リピーターの男性は興奮して、「うりやーーーー」と海の底に消えていった(笑)

取材班が帰国した翌日は、into the blueのゲストの最終日。
島影から少し南におりたエリアで、親子を発見した。
少し様子を見るために遠目からエントリー。
初めは警戒心が強かった母親も、私たちが静かにしていると水面で休んでくれ、ゆっくりと近づくとそのまま水面で眠りについてしまった。

■ゆったりと水面で休む親子の動画
https://www.youtube.com/watch?v=zzRrVKFlsBw

しばらく経つと、ハッと気がついたかのように、潜り始め、移動した。
ただ、移動範囲もそんなに遠くないことから、船で静かに近づいてエントリーするという行為をくりかえした。

他の船にも、水面では静かにしているようにと伝えたが、この1ヶ月の間、ババウ中で透明度の良いエリアで親子に会えている船が少なかったこともあって、急激にアプローチをしてしまったようで、その船が入水した際には、近くで見られなかったと無線で連絡が入っていたが、こちらの船の時には水面で寝てくれ、ハッと気がついて泳ぎだした。
最終日には、ババウの透明度は相当に回復していっていて、それ以降は比較的良いコンデションが続いていると連絡がはいっていた。

ババウの海はクジラの海であって、そこに人がお邪魔しているという気持ちをもって接していかない限り、いつかこの海にクジラが来ることはなくなってしまうだろう。

楽しい思い出と貴重な経験をくれる海とクジラたちに、敬意をもってこれからも接していきたいと心から思う。

<世界の果てまでイッテQ!>
この様子は、2018年11月18日(日)放送されました。

<2019年トンガホエールスイム開催日程>
2019年のトンガホエールスイムも募集しています。
week1 2018年8月4日(日)〜8月11日(日)満席
week2 2018年8月11日(日)〜8月18日(日)
week3 2018年8月18日(日)〜8月25日(日)
week4 2018年8月25日(日)〜9月1日(日)
week5 2018年9月1日(日)〜9月8日(日)満席
week6 2018年9月8日(日)〜9月15日(日)
week7 2018年9月15日(日)〜9月22日(日)
week8 2018年9月22日(日)〜9月29日(日)

※お申し込みお問い合わせはHPの専用フォームからお願いいたします

記事:写真 稲生薫子

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