キンバリー地方で、僕が一番楽しみにしていたのは、この地域のアボリジニの先祖たちが、岩壁に描いたいくつもの壁画（Rockart）だった。今までにもエアーズロックなどで壁画を見てきていたのだが、このキンバリーの壁画は、他の地域のものとはかなり異質な印象を受けていた。

ほとんどの地域で見られるのが、動物や動物の精霊をモチーフにした壁画。しかし、この地域のそれは、人間の姿をしている。というよりも、どう見ても宇宙人そのものにしか見えない。ドリームタイム（天地創造）の時代、まだ地球がやわらかった頃に、この精霊たちが山や森や海、川や生き物を創り出したと考えられている。
この精霊は、別の星からやってきたという神話もあるのだという。確かに、今回唯一この壁画をじかに見れたBell Gorgeの精霊の姿は、宇宙人か、あるいはイエス・キリストのような姿をしている。

このような壁画がキンバリーには、多数存在している。しかし、残念ながらその多くは、一般には非公開にされているのだという。
未だに、神話の世界の中で行き続けるアボリジニたち。彼らにとっては、現世の地球に存在するものは、全て精霊の力によって、自由自在に変化させることができると考えられているという。
物質社会の中で欲望にまみれて生きている、僕らの存在を、彼らはどのように感じているのだろうか。