INTOTHEBLUE 水中写真家  越智隆治

Photographer Takaji Ochi Official Site INTOTHEBLUE水中写真家 越智隆治

Official SNS
Facebook
Twitter
Instagrum

Blog

SpecialTrip Blog
トンガ ホエールスイム

11日目、イルカとクジラ

2007.08.04 / Author.


10日目 風が変わる

朝から、激しい風雨。しかも寒い。風向きが北、あるいは東から、南へと変わった。寒くなるのは、クジラにとっては悪い兆候では無いと思う。しかし、あまりにも強く吹いているために、この日ボートで海に出るのは諦めた。
ホテルのレストランで朝食を食べていると、マネージャーのマリアが来て「最低2日間はこんな天気が続くみたいよ」と教えてくれた。
明日、8月3日は、豊田さんの最終日。「海に出れればよいんですけどね」と言うと、「まあ、こればっかりは自然相手だからね。しょうがないよ」と、念願の親子クジラが撮影できたこともあり、本人の気持ちに余裕はでてきていたようにも見える。でも、できれば最後にもう一度、海に出たいに違いない。
この日、僕らは部屋でゲームしたり、マーメイドバーでのんびりしたり、Tシャツ屋さんに挨拶に行ったり、アクアリウムカフェでネットしたりと、久しぶりに島の上で過ごした。
11日目、イルカとクジラ
この日も風は強く吹き、雨雲が低く垂れ込め、島を覆っていた。移動する雲の速度も速い。やっぱり今日も駄目かなと思いつつ、オンゴに電話をかける。「どうかな?」。「コンディションはクソだな」とオンゴ。彼がこう言うときは、基本的に出たとしても、風が強くて、可能性はかなり低いということ。だから、きっと僕とトニー、エミさんだけなら海に出なかっただろう。
「豊田さんが、最終日なんだよね」と言うと「あ~、そうかTOYOTAは今日が最後か・・・」。「あくまでオンゴの判断に任せるけど、もし可能なら、しばらく様子みて、少しでも行けそうって思ったら連絡して。皆部屋で待機しているから」。と伝え「Sai Pai(了解)」という言葉を聴いて電話を切った。
しばらくは、部屋で待機。ということで、皆でカードゲームをしようということになった。その準備をしていると、オンゴから電話がかかり、「少し良くなったから出てみよう。20分後にジェティーに行くよ」ということになった。慌てて皆に連絡し、ジェティーへ向かい、出発した。
その頃、空全体を覆っていた雲が切れてきて、晴れている部分と、雲がかかって雨が降っている部分にはっきりと分かれていた。この日、この4年間で海に出た中では一番風が強く吹いていて、島々に囲まれた湾の中でさえ、いくつもの白波が立っていた。出ていた他のボートも、ほとんど行ける場所が限られて同じ場所で、クジラもいないのに、立ち往生している状態だった。
「今日、可能性があるのはノースベイだけだ」。今年2度目のノースベイ。オンゴの直感にかけるしかない。荒波の中、ゆっくりゆっくりとノースベイへ向かう。この湾は、高い断崖絶壁に守られていて、南、あるいは東風の場合は完全な風裏になるため、このエリアだけが穏やかな状態で保たれている。
しかし、クジラがいる可能性はそれほど高くは無い。ノースベイに入ると、しばらくは目を凝らしてブローを探す。オンゴは「TAKA、見当たらないか?」と聞いてきたのだが、どうやら彼はすでにクジラのブローを確認しているような感じだった。僕らが確認できるのを待っているようだった。しばらくして、2つのブローを発見。「あそこに、ブロー2つ!」というと、「そう、あそこだ」と僕らが確認するのを待って、ボートをクジラに近づけていった。それにしても、駄目もとで来たノースベイ、2回とも当たりってのは、かなり運が良い。
クジラの側まで接近すると、なにやら違うものが動くのを発見した。「イルカだ!」。イルカたちは、クジラたちの周囲で、悪戯するように泳ぎまわっている。クジラはあまり周囲をイルカたちにウロチョロされるのが苦手なことの方が多そうな印象がある。それはもしかしたら、今までイルカとクジラに遭遇したとき、クジラの方は常に親子だったからかもしれない。しかし、今回は大人のクジラ3頭。どんな行動をするのか水中で見てみたかった。
僕らは、クジラとイルカが一緒に泳ぐ水中写真を撮りたくて、勇んで海中にエントリーした。透明度はよい。イルカたちのキュルキュルというソナー音が、あちこちから聞こえてきた。

肉眼では、イルカとクジラが一緒になって泳いでいるのが確認できた。しかし、撮影となると、なかなか接近してきてはくれない。僕ら3人は、我武者羅にクジラを追いかけ、イルカと絡むタイミングに撮影ができることを願った。が、過去に無いくらいに必死に泳いだせいで、僕は過呼吸に陥りそうになり、トニーは「吐く寸前」まで泳いだけど、まともな写真は撮影できず、なんとかイルカとクジラが一緒にフレームの中に入っている程度の証拠写真しか撮れなかった。

最初はハシナガイルカだと思っていたのだけど、どうやら違う。しかも2種類の違うイルカたちのようだった。1種類は、Pantropocal Spotted Dolphn(Stenellaattenuate)和名は多分タイヘイヨウマダライルカ、もう1種類は、図鑑で確認にしたところ、Rough-toothed Dolphin(Steno bredanensis)和名はまだ確認していません。どなたかわかりますか?
とにかく、しばらくは、クジラたちと、2種類の違うイルカたち(多分50頭以上はいたのでは)とに囲まれて、僕ら3人は青い海の中で、全力で泳ぎまくった。しかし、必死になって追いかけるよりも、疲れて水面で浮遊しているときの方が、クジラもイルカも寄ってくる。この日、一番良い写真が採れたときも、無理に泳がず、向こうが向かってくるのを水面でじっと待っているときだった。
結局、この日は、ノースベイで、5頭のクジラと2種類のイルカたちに遭遇。コンディション最悪の中、本当にラッキーだった。他のボートに情報を聞いたとこと、まったくクジラを見つけられていなかったそうだ。
この日で豊田さんのロケは終了。結局11日間の日程で、10日間海に出て、7日間水中でクジラの撮影に成功。海に入らなかった日も2日間は、ボート上から色々なパフォーマンスを撮影できた。まったく撮影できなかったのは、エンジントラブルんボートを救助した日だけだった。
ジェティーに戻ると、豊田さんはオンゴに「今日が最終日、本当に楽しかった。ありがとう。また来年来ます」とお礼を言うと、「あれ、今日が最後だったのか。知らなかったよ。こんなコンディションでもクジラに会えて良かったな。また来年も待ってるよ」と挨拶を返した。(わかってたくせに)。僕は内心思ったのだが、その場では口に出さなかった。
本当は、最終日の豊田さんのためにボートを出したのだ。僕らだけだったら、きっと「バーでビールでも飲んでろ」と言われてたに違いない。「お前が最終日だから、こんな天気でもボートを出したんだよ」みたいな恩着せがましいことを言わないところが、彼の優しさだ。僕はそういうオンゴが大好きだったりする。

写真は豊田さんが撮ってくれた、クジラ撮影中の僕です。豊田さん2週間お疲れ様でした。

RecentEntry

  • カテゴリーなし