INTOTHEBLUE 水中写真家  越智隆治

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トンガ ホエールスイム

9日目(8月1日)、今シーズン初親子クジラを確認

2007.08.02 / Author.


朝、朝食を食べていると、8時30分にオンゴから電話がかかってきた。「今日は9時に出よう。いいか?」というのだが、僕と豊田さんはすえに食べ終えていたけど、トニーとエミさんが食べ始めたばかりだったので、「9時半にして」と頼んだ。朝になって突然、オンゴが早めに出ようと言ったのは、何か直感が働いていたのかもしれない。


この日は、豊田さん、トニー、エミさん、僕の4人が乗船。空は曇天、風は昨日ほどでは無いが強く吹いていた。最初に、今年良くクジラを発見している海峡でペアのクジラを発見。しばらく追走するが、まったく止まる様子がない。しばらくして、追うのを諦めて、別のクジラを探す。南東のリーフにある島の手前でブローを発見し、そちらに向かうが、シングルのクジラで、まったく期待は無かった。

この日、蟹座の豊田さんは、「ネットで見た星座占いで、「最高によいことがある」と書いてあったんだよな~」と言っていた。その運に期待したい。エミさんは、ボート後方のブローを探しながら、ちょっと妙な手つきをして、「クジラを呼んでるのよ」と言いながら、お祈りを続けていた。

トニーも後方を、僕とオンゴは前方に目を光らせていた。深く潜ってしまうクジラのブローは、長く潜行していたせいもあり、浮上直後に高くまっすぐに勢い良く立ち上る。そういうブローは見つけやすいけど、だいたい、また深く潜行してしまうことが多い。
親子は、まるで忍者のように水面や水面直下に潜み、母親のブローもほとんど見えなかったりすることが多い。風が強い日などは、本当に見つけることが困難だ。しかし、とにかくほんの些細な変化にも目を離さないように神経を集中させていた。
かなり遠くのリーフの手前に、リーフに当たって砕ける波とは微妙に違うしぶきを見つけた。しばらくは、それが波しぶきなのか、そうじゃないのか判断しかねた。しかし、徐々にしれが波しぶきでないとの確信が持てるようになってきた。
「あそこ、リーフの手前に、ちょっと違うブローが見えるんだけど」とオンゴに伝えた。オンゴは「見えないけど、行ってみよう」ということになり、そちらに向かって、ゆっくり、ゆっくりとボートを進めた。
近づくと、それは明らかに深く潜っているブローではなくて、水面直下に身を潜めているクジラの静かなブローだった。しかも、同じエリアで何個か上がっていた。最初に発見したのは、おそらく3頭の大人。しかし、僕はリーフの近くを慎重に見回した。
すると、小さな背びれの影が、波間に見え隠れしてるのを確認できた。「あれ、あそこ!子供じゃない!?」とオンゴに伝えると、しばらく様子を見ていた、オンゴが「そうだ、あれは子供だ、間違いない!」と僕を見た。4年間、トンガでクジラを撮影しているけど、このときほど、興奮し、嬉しかったことはなかった。普段はあまり感情を表に出さないのだけど、このときばかりは「やった!子供だよ!」と大声で叫んで皆の顔を見回してしまった。
しばらくは静かに追走。親子が慣れるまでは、無理にエントリーせず、しばらくはこの状況を続ける。だんだんと親子がボートに慣れて、ほとんど動かなくなるのを見計らって、水中に入ってみることになった。慎重に、慎重にゆっくりと親子に接近する。全様が確認できるようになってきた。
僕とトニーはとにかく豊田さんを前に出し、後ろから様子を伺っていながら、撮影を開始した。しばらくはまったく動く気配を見せなかった。トンガでは、親子クジラの場合は、素潜りによるアプローチは禁止されているので、水面に留まったまま、さらに接近を続けた。
子供の肌は、とにかく今まで見たどの子クジラよりも白かった。母親の鼻先にのっかっったり、母親の下に隠れたりしながらも、こちらに興味を示しているようだった。それにしてもこのお母さんは大きい。数日前に出会った、妊娠クジラと比較しても、かなり大きかった。
目の前にリーフが迫り、親子クジラがそれ以上前に進めなくなったところで、向きを変えて、僕らの方に向かって泳いできた。ほとんど真正面。子クジラは、母親の下に隠れていた。「このままじゃ、ぶつかる!」と思った僕は、とっさに、今までいたのとは反対側に回り込んでクジラを避けた。それでも、通過した直後に、テールが作り出す水流に巻かれてしまった。ボワっと全身を水流に包まれた。自分が押し戻されているのがわかった。
今期、初クジラの親子との遭遇。ボートに戻ると、僕は、トニー、オンゴ、エミさん、豊田さんの順に、がっちりと握手をした。とにかく、皆が来る前に子供が姿を見せてくれて、これほど嬉しかったことは無かった。
子クジラは、肌がとても白いことから、エミさん命名で、最初は「ホワイティー」になったのあが、トンガ語で「白い」というのが「ヒナヒナ」という可愛らしい言葉だったので、最終的に「ヒナヒナ」になった。
母親は、ドーセルフィンの右側に、2本の白い線が入っているのが確認できたので、ボート上からでも簡単に確認できそうだった。
その後も何回か水中で撮影、船上からは可愛いブリーチングやテールスラッピングを撮影。いつもより早くに切り上げて、帰路につく。とにかく、9日目にして、やっと親子に遭遇、撮影した。豊田さんは残り2日。親子は撮影できたけど、今日1日ずっと雲がかかっていたので、明日は晴れた太陽の日差しの下、撮影がしたい。とにかく、ほっとした。他のボートも、親子クジラを目撃したという情報も入ってきた。
やはり30日の大潮前後で何頭かの子クジラが生まれているようだ。
しかし、夜食事をともにした、別のボートに乗船していた日本人の女性から、僕たちが最初に撮影した「妊娠クジラ」と同じ個体と思える妊娠クジラに今日遭遇したと聞かされた。テールだけを水面に出して眠いっていたそうだ。写真を見せると、同じような行動を取っていたという。
彼女はまだ子供を生んでいなかったのか。確かに、今日の母親に比べて、身体もかなり小さい。初産なのかもしれない。無事にかわいい赤ちゃんを産んでくれればいいのだけど。

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