トンガでの1ヶ月半に及ぶホエールスイミングを終了して、帰路のオークランドに滞在中。4週目、残りの2日間は、風が強くなり、空には雲も広がった。2日間とも海には出たものの、ほとんど成果の無いまま、終了した。最初の2日間で、2隻のボートとも、親子やペアと長時間泳げたりしたので、残念ではあったけど、皆それなりにクジラと泳ぐことには満足してくれていたようだった。もちろん100%というわけにはいかないのだけど。
最終日、この日もオンゴは別のボートに乗船予定だったので、ノーファがキャプテンだったが、ジェティーに迎えにきてくれて、出発する間際になって、オンゴからノーファの携帯に電話が入った。どうやら別のボートの出港がキャンセルになったらしい。
「今日、最終日だから、もし、タカがオンゴにスキッパーしてもらいたいなら代わるけど、どうする?」とノーファが聞いてきた。最終日だから、コンディションが悪くても、オンゴと海に出たかった。もちろん、ノーファもスキッパーとして申し分無い人なのだけど、彼女に「本当にいいの?」と聞くと、「オンゴも最後だから一緒に出たがってるのよ」と言ってくれた。僕はノーファに「ありがとう」と言って、オンゴを迎えに行くためにマーメイドバーに立ち寄った。
いつもは、「またお前がガイドか!しょうがないな!」と言われるのだけど、最後にそう言ってもらえるのは本当に嬉しかった。
ノーファと交代してオンゴとともに、今年最後の海へ出る。コンディションは決して良くはない。クジラを探せる範囲も限られていて、なかなか良いクジラも見つからない。それでも、島の風裏になる比較的穏やかなエリアで、シンガーを見つける。
ボート上からも唄声が聞こえてきたので、海に入って探すことにする。どうにか見つけたが、かなり深く、撮影は困難だ。しかも、このクジラは何度チャレンジしても、最初鳴いてる深度から、途中でさらに深く深度を取って、僕らが潜っても確認できなくなってしばらくしてから浮上するので、なかなか撮影するには至らなかった。
事情を説明したけど、オンゴは必要なまでに、僕らをそのクジラにチャレンジさせた。外洋で、バラクーダの群れや、ツバメウオ、ブロンズウェラなどのサメも目撃した。長く動かずに何度も水面で待っていたので、身体も冷え切ってしまった。
それでもオンゴは諦めようとしない。僕も彼が止めるまでは、可能性が低いと思っていても、諦めずに海に入り続けた。
午後になって、ランチを食べて再度チャレンジしたが、やはり同じパターンを繰り返す。オンゴも諦めて、別のクジラを探しに行くことにした。しかし、今日はほとんど可能性が無いといっていいくらいに、クジラがいなかった。
キウィ・マジックというボートが親子とエスコートについていた。昨日見た、まったく止まってくれない親子とエスコートだった。普段になら無視して「自分のクジラを探す」ことに固執するオンゴが、この日は僕らが何も言わないのに、無線でそのボートに次に譲ってくれるように頼んでくれた。
悪条件の中、最終日だから、どうしてもクジラを水中で見せてくれようとしている彼の思いが伝わってくる。だから、今日は可能性が低いと思っても、彼が「泳げ」といい続けるまでは泳ぎ続けるつもりでいた。
しかし、譲ってもらった後もこの親子とエスコートは、まったく留まらず、移動を続け、ブリーチングなどのパフォーマンスを見せてくれることもなかった。
最終日、残念な結果に終わったけど、僕は、彼の気持ちだけで十分満足できた最高の1日になった。(もちろん、参加者の人たちには、良いクジラを見せてあげたかったけど)。
これで、今年の僕らのババウでのクジラとの生活は終了した。長いようであっという間の1ヶ月半だったように思える。滞在している間は、早く家族に会いたいと思っていたけど、いざこの地を離れると思うと、やはり多少の寂しさもある。
今年は、風が止まず苦労したけど、トニーと一緒にホエールトリップを開催して3年。3年連続で全てのゲストに海中でクジラを見せれてたということが、僕らにとっては何よりも嬉しい結果だ。
来(2008)年は
1週目:8月2日~8月10日
2週目:8月9日~8月17日
3週目:8月16日~8月24日
4週目:8月23日~8月31日
5週目:8月30日~9月7日
6週目:9月6日~9月14日
の計6週間に渡って、チャータートリップを開催する予定だ。