INTOTHEBLUE 水中写真家  越智隆治

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トンガ ホエールスイム

6週目最終日・8頭の群れと泳ぐ

2008.09.15 / Author.

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3日目は、風も強く、ペアを見つけて海に入ったものの、それほどの成果も無く終了した。そして、最終日の9月12日。まだ風はあったが、なんとか午前中から良いクジラが見つけられるようにと海に出た。僕とエミさんはオンゴ、トニーはピーターがスキッパー。

あまり船がいかないノースベイ方面に向かうと、別のオペレーターの船に親子がついているのが確認できた。普段なら、オンゴはこの時間から他の船にクジラを譲ってもらうなんて、絶対しそうにないのだけど、頭痛も激しいし、最終日だからというのもあるのだろう、早めにその船のスキッパーに連絡を取って、次に譲ってもらえることを確認すると、その近くで順番を待つことにした。
ところが、しばらくすると、別の船が姿を見せた。どうもおかしいと思って、クジラを持っている船に連絡するが、まったく応答が無い。新たに来た船にも連絡してみるが、反応が無い。明らかに無視されているとしか思えない。
何だか、嫌な雰囲気になってきた。案の定、その新たに来た船が、こちらと連絡すら取らないまま、クジラを譲り受け、今まで持っていた船は、猛スピードで走り去っていった。
船同士は同じオペレーターのだけど、こちらが先に譲ってもらうことに、スキッパーからオッケーをもらっていたにも関わらず、何の連絡もせず、こちらの連絡にも応答せずに、クジラを別のボートに譲るということに怒りを感じた。
譲ってもらえなかったことに対してではない。もし、同じ会社の他の船に譲るから、こちらに譲れないというなら、最初からそう言えばいい。僕らだって、人に譲ってもらうよりは、自分たちの力でクジラを探す方がいいのだから。
ただ、「次に譲る」と言っておきながら、その後の連絡をまったく無視して、後から来た別の船に譲ってしまうというのは、それまで1時間くらい、何もせずに待っていた僕らの時間がまったく無駄になってしまったということなのだ。それも最終日に。
オンゴは、何も言わず「別のクジラを探しに行こう」と言って、その場を離れようとしていた。
皆、納得はいってなかった。オンゴも、僕も、エミさんも乗っていたゲストも怒っていたのだけど、頭痛を押して海に出てくれたオンゴにこれ以上は負担をかけたくなかった。結局喧嘩するとなれば、オンゴが対応しなければいけない。言い合いしていて、頭に血が上ってしまったら、さらに彼の頭に負担がかかる。
納得はいかなかったし、最終日にこんな思いをさせられて、悔しかったけど、「別の良いクジラを探しに行こう!」とオンゴに伝える。
しかし、他の海域を探していたトニーも、結局何も見つからず、こちらに向かってきていた。僕が事情を説明すると「でも、探してたけど、何もいないよ。長くかかるかもしれないけど、順番を待った方がいいよ」とトニー。
しかし、オンゴは、もうここにいる気も、その親子を譲ってもらう気もまったくなくなっているようだった。
少ない可能性かもしれないけど、とにかく僕らはそこを離れ、クジラを探しにでかける。これで見つからなかったら洒落にならない。嫌な思いだけ残して終わることになる。それにゲストにしてみれば、しょうがないから、次の船が終わるまで待ってもらいたいと思っていたに違いない。
だから、どうしてもクジラを探さなければと思っていた。ランチ後、遥か外洋の方でブリーチングしているクジラを発見した。数頭の群れのようだ。オンゴも僕も「こっちに来い、こっちに来い」と願いながら、そちらの方向に船を進める。
するとクジラたちの方も、こちらに向かって激しく移動してくるのが確認できた。はっきりとはわからなかったが、少なくとも6頭は一緒のようだった。タイミングよく、一番外洋側にある島の浅瀬に沿って群れはゆっくり移動を始めた。透明度もよく、浅い。
僕らはエントリーして、何度も何度もその群れにアプローチした。群れの合計は8頭。今まで、こんな浅い、透明度の良い海域で、これほどゆっくり泳ぐ群れを見たことはなかった。8頭全てを1カットに撮りこむことも可能な状態だった。
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8頭もの群れが、浅い外洋のリーフをゆっくりと移動する姿は壮観だった。何度も何度もアプローチをして撮影をした。泳ぎ過ぎて、吐き気を催すくらいだった。最後には、ホワイトパッチと呼ばれている、浅い砂地のエリアにメスが留まり、1頭のオスが、メスを自分のものにしようと迫ってくる他のオスを何度も何度も追い払うシーンをずっと目撃することができた。
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もう1隻の方も、なんとか親子と泳いだ後、この最後のホワイトパッチの場所で一緒に海に入り、このやり取りを目撃することができた。
譲ってもらえなかったおかげで、逆に良いものを最後の最後に見ることができた。あのまま不満を残して、いらだって文句を言ってるだけだったら、どうなっていたかわからない。気持ちを切り替えて、絶対良いクジラを見つけようとした思いが通じてくれたことに、感謝し、僕らは全員でペットボトルの水で乾杯をして最終日の帰路についた。

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