2010年8月10日、快晴。トンガ初日。3隻のボートで海に出る。
先にトンガに入っていたトニーとエミさんからは、「今年はクジラが少ない」という情報をもらっていた。実際、他の船のスキッパーたちに聞いても、この日までに、親子は2個体、あるいは、3個体の目撃情報しかなかった。「船の調子が悪い」、「スキッパーがいない」、「ホテルの部屋が使えない」などなど、毎年の事だけど、トンガはいつも問題が多発して、最後の最後までドキドキハラハラさせられる。正直、夜はビールを飲まずにはやってられない。
僕は6人乗りプロティウスに乗船して、南のリーフへ向かった。運の良いことに、30分もしないで、計5頭のヒートランを発見した。しかもメスは子どもを連れていた。
しばらく様子を見ていると、エスコート以外のオス2頭は、あきらめて去っていった。それでも、エスコートが執拗に、激しく親子を追いかけ回すので、なかなか止まりそうになかった。
しばらくすると、止まりはしないのだけど、同じ場所をグルグルと回りはじめたので、エントリーしてみた。透明度は今ひとつだったが、この親子とエスコート、異常なまでに接近してくる。
エスコートは、この母親と無理矢理にでも交尾をしようとしているかのようだ。母親はそんなエスコートから子どもを守るようにしながら泳いでいた。
上の写真手前が子ども、真ん中が母親、奥がエスコート。
母親が子クジラの背中を押して、移動するように促す。子クジラは、エスコートから逃れるようにしながら、方向転換して、僕らの方に向かってくるものだから、必然的に、母親もエスコートもこちらに向きをかえてくる。
向かって行くどころか、皆引き気味になりながら撮影を行なっていた。時には、本当にこちらが逃げなくてはいけない状況に。
突如、真下からエスコートが浮上してきたこともあった。
近過ぎて、全身が入り切らない。
激しく動き回り、水面を激しくたたくので、水面が泡で白濁して、行くての視界を遮る。突然方向転換して、その白濁した先から向かってくるのではないかと少し不安になりながらも、その中に突っ込んで行き、彼らの姿を再確認する。
白濁した海の中には、彼らが接触したときに皮膚からはがれ落ちた、薄皮が散乱していた。最初の年に訪れたゲストが、この皮をホルマリン付けにして、持ち帰ったのを思い出した。
とにかく、親子とエスコートでこれほどアグレッシブな状態なのは、かなり珍しい。子クジラはなんで僕らの方に向かって来ようとするのだろうか。。
しばらくすると、トニーの乗船していた船が来たので、順番を譲り、ランチを食べる。彼らが泳ぎ終わってから、再度入水したが、すでに行動パターンが変わっていたし、さらに透明度の悪い海域に入ってしまったので、この親子とエスコートから離れて、西の外洋へ移動していった。無線では、エミさんは別の親子、トニーたちは、3頭のヒートランに遭遇していたが、あまり入れる感じではなかったようだ。
ノースベイまで足を伸ばすが、結局この日はこれで終了して帰路に着いた。初日にして、かなり大興奮な遭遇ができたので、「クジラがいなくて、みせれないかも」という不安はプレッシャーは無くなった。
結局この日だけで、3隻の船で3組の親子に遭遇した。明日も会えるといいな。