問題が発生。風が強かったので、この日海に出るのはやめて、残留組全員で皆を空港まで見送りに行く。昨晩も、今朝も、11時30分のフライトで9人、14時のフライトで1人の予約が取れていると連絡があり、チケットも空港で受け取れると何度も確認していた。しかし、14時の1名を10時30分のフライトに乗せられないかトライするために、全員で9時30分にホテルを出発してバスで空港に向かう。
しかし、10時30分のフライトはすでに満席。それだけでは無く、11時30分のフライトのネームリストを確認すると、確実にリストに載っていたのは、たったの3人だけ。しかも他の6人はその時間のフライトのウエイティングリストにも載っていなくて、16時の最終便のウエイティングリストに名前が載っているだけだった。おまけに14時のフライトに予約が入っているというもう一人もウエイティングリストに入っていた。(しゃれにならない・・・)一瞬、僕、トニー、エミさん、この週のグループリーダーをお願いしていた田宮さん全員がリストを目の前にして、言葉を失った。
要するに確実に飛行機に乗れる人数はたったの3人。否、重量制限のある17人乗りの双発機なために、もし総重量がオーバーしたら、その時点で席が空いていても、搭乗できなくなる可能性もある。
エミさんは、町にある航空会社のオフィスに戻り、そこのコンピューターには、ちゃんと全員の名前がリストアップされているのを確認した。にもかかわらず、空港にあるリストには他の搭乗者の名前が線で消されて、その横に手書きで僕らのゲストの名前が上書きされたりしていた。しかし、「キャンセル」されて、線が引かれていたはずの、当人たちが真横で、「私たちは、キャンセルした覚えはまったくない!」とスタッフに詰め寄り、当初リストにあった、人たちが優先して搭乗を受け付けられていた。
とにかく、ネームリストに載っていた3人を先にチェックインさせて、15人で重量制限いっぱいになった時点で、リストに載っていた人の搭乗も打ち切られた。リストに載っていながら、搭乗できなかったドイツ人がスタッフの女性に詰め寄るが、まったく聞き入れられなかった。
僕たちも、空いている3席にどうにか体重の軽い女性2人を乗せられないかと交渉するが、航空会社のスタッフはまったく聞く耳を持たない。僕ららの顔を見ないで返事もしない。「荷物は後の便でも構わないから、本人たちだけもで乗せれもらえないか」と何度も頼み、最後には本人たちを目の前に連れて行って「こんなに小さくて、体重も軽いから大丈夫でしょ?」と詰め寄るが、スタッフの女性は席を離れてドアの向こうへと姿を消した。国際線は今日の夜20時40分に首都トンガタプからオークランドへ飛び立つ。明日日曜日は、トンガでは国内線は1便も飛ばない。何としても今日中に皆をトンガタプに戻さなければ、いつ日本に帰国できるかわからない。
交渉の間中、トンガタプの旅行会社のルビーに何度も電話をかけるが、リストに載っているゲストのほとんどが彼女の手配しているゲストでもあり、もうほとんどどうすることもできない状態。「チャーターフライトは出せないのか?」と僕やトニーで彼女に質問したりしていたが、何の進展も無い。
僕は、一度居残り組(2週間参加)の池町さんをホテルに送り返し、国際線のエアの変更に関して日程の変更連絡が可能か確認の連絡をするために、タクシーでホテルに戻ることにした。しかし、航空会社のオフィス前まで来たときに再度どうにかならないか確認したくて、そこでタクシーから降りることにした。「池町さんは部屋に戻って休んでいてください」と伝えたのだけど、「いや、こんな状況でそういうわけにはいきませんよ。何かお手伝いしますよ」と言って、一緒にタクシーを降りる。
僕がオフィスのカウンターで、「こちらのコンピューターに登録されているリストと空港のスタッフが持っているリストがまったく違う」と言うと、最初は「そんなことはない」と言っていたのだけど、現に7人がダブルブッキングで搭乗できず、いまだに飛行場に居残っていること、今日中にトンガタプに着かないと国際線に乗り継ぎできない事など説明。もし、午後のフライトにも乗れないのであれば、チャーターフライトは出せないのか?と詰め寄ったのだが、その予定は無いという返事。
しかし、そのとき、今回のエアの手配を頼んでいた旅行社の社長のルビーから、携帯に「航空会社のCEOに頼んで、チャーターフライトを飛ばす」という連絡が入る。僕は町のオフィスのスタッフではらちが開かないと、諦めて皆のためにスーパーで飲み物や、スナックなどを買出ししてきてくれた池町さんと再度空港へ戻る。「ホテルに戻っていてください」と再度伝えたのだけど、「いや~、そんなことできませんよ」と言って、食料と飲み物の袋を抱えて、池町さんは一緒にタクシーに乗った。
昨年も「チャーターフライトを飛ばす」と言われて、皆をぬか喜びさせて、結果的に飛ばなかった経験がある。だから、いくらそう言われても確実になるまで皆に言うことは控えることにした。飛行場に戻ると、すでに14時のチェックインが終了していて、なんとか最初の予定通り1名が搭乗することができた。
残り、6人。この次の16時の最終フライトに全員が乗れる見込みは無かった。後の希望はチャーターフライトのみ。僕は何度も何度も携帯メールをルビーに送り、早く確実な情報を送ってくれることを願った。
皆は外のベンチに朝の10時前から座り続け、トランプをして時間をつぶしていた。
「17時30分にチャーターフライトを飛ばす」。ルビーから再度携帯にメッセージが届く。僕はしばらくして、空港スタッフの女性に「チャーターフライトが飛ぶそうだけど本当ですか?」と尋ねると「飛ぶことになったわよ」との返事。「何時に?」と聞くと「17時30分」と、ルビーと同じ時間を言ったので、「それは100%確実なの?」と再度聞き返すと「100%確実に飛ばすわ」。「それに6人全員が乗れるんですか?他の帰れない人たちとかが乗って、また重量制限とかで乗れない人が出たりしないの?」と聞き返す。彼女は「乗るのはあなたたち6人だけよ」。「え?6人だけ?(他にも乗れなくて諦めて町に引き返した人たちもいるのに、その人たちは乗せないのか?)。それって、本当に本当に100%確実なの?」。「間違いないわ」。
そのやり取りをトニーも聞いていた。しかし、僕もトニーもまだ昨年の痛い記憶があるので、まだ100%信用していなかった。昨年も何人もの関係者に「100%チャーターフライトを出す」と言われて結局出なかったから。まだ、昨年は帰りじゃなくて、行きのトラブルだったので、帰国時は問題なかったのだけど。
もう後は運を天に任せるしかない。このフライトが飛ばなかった時点で、全ての変更手続きをしていかなければならない。まだ、皆にはチャーターフライトのことは告げずにいた。
16時の最終便が飛び立ち、結局その便では誰もキャンセルが出ず、一人も搭乗できなかった。その時点で、地上スタッフが次のチャーターフライとのリストを作り始めた。「本当に本当に飛ぶの?」と再度確認し、リストを作っていた男性も「飛ぶよ、このリスト作ったら、チェックインを開始します」と何事も無かったようにあっさりした返事。僕らはその時点で「チャーター便が17時30分に到着して、全員がそれに搭乗できる予定だ」と皆に伝える。皆の表情が多少明るくなったのがわかった。
もうこれ以外にトンガタプに帰る手段は無い。しばらくするとルビーから到着が18時30分に変更になったと連絡が入る。「え、18時30分?トンガタプに着くのは19時過ぎ?国際線の出発は20時40分だけど、大丈夫かな・・・」
トンガでは、国際線と国内線のターミナルがかなり離れていて、タクシーで移動しなければならない。もしこれ以上遅れたら、国際線への搭乗が間に合うかどうか・・・。ルビーから再度連絡が入り、「国際線のターミナルに直接着陸してもらうから。国際線にも連絡して、とにかく全員が来るまで待っていてもらうから」とのこと。僕はこちらスタッフにも再度確認を取る。誰に聞いても、国際線の方に着けるとの返事。それでも最後まで信用できないのが、この国で今まで経験してきたこと。
皆がチェックインを済ませ、待合室にいる間に、国際線のターミナルに直接付けるって言ってるけど、万が一、そうじゃなかった場合にとルビーの携帯番号を渡し、「とにかく何かあったら、誰かの携帯借りて連絡して」と伝えた。
18時30分になっても飛行機が来ない。これ以上遅れたら、国際線に間に合わない。そう思っていたときに、飛行機が姿を現した。しかも、トンガタプからの乗客は誰も乗っていない・・・。つまり、完全にこの6人のためにチャーターフライトを飛ばしたわけだ。
別れの挨拶もそこそこに、皆は機内へ送り込む。が、この後に及んで飛行機の前に記念写真撮ってる人もいたので「早く乗れよ!本当に帰れなくなるぞ~!」搭乗をせかした。全員が乗り込んで飛行機に対して、僕、トニー、エミさん、まっちゃん、池町さんは。僕ら「早く飛びたて~!」。「さっさといけ~!」と罵声を浴びせながら手を振った。飛び立った後、「6人だけで片道チャーターって・・・、これいくらかかるんだろうね?」とトニーに尋ねると「そんなの聞きたくない。知りたくない」と歯軋りしていてた。
6人を乗せた双発の飛行機が、綺麗な夕焼け空に向かって、どんどんと小さくなるのを僕らはフェンス越しに見送ると、全員で握手をして、呼んでおいたタクシーに乗り込んだ。車内では全員方針状態。
荒れた海でクジラを探すより疲れた。こんなことなら、海で出てれば良かったかな・・・。