INTOTHEBLUE 水中写真家  越智隆治

Photographer Takaji Ochi Official Site INTOTHEBLUE水中写真家 越智隆治

Official SNS
Facebook
Twitter
Instagrum

Blog

SpecialTrip Blog
トンガ ホエールスイム

2004年トンガでのクジラ水中撮影5:最高のホエールガイド

2004.08.19 / Author.


曇り時々晴れ、ベタ凪ぎ。この日は今までで一番遠出をした。フルークには僕らの他にオーストラリアのメルボルンから来たデイビッドも同船していた。


彼は去年、1週間くらいここに訪れて、クジラウォッチングをしたが、まともにクジラに会えたのはほとんどなかったそうだ。今年も別のボートに乗っていたが、グループで来て、スピードも遅く、スキッパーの腕もあまり良くないので、1日で良いから乗せて欲しいと頼んできたので、乗せてあげることにした。
午前中はブリーチング2回見ただけで、なかなかクジラが見つからなかった。しかし、12時30分過ぎ、メイティングポッド(メイティングポッドB)を発見。日本でなら、絶対危ないから入水させてもらえない状況なのに、オンゴはまた「入れ」と言う。初回、群れが水中で留まっていたので、3人でゆっくり近付いていった。群れのかなり近くまで接近。撮影に成功した。
しかし、その後2度チャレンジしたが、移動を始め、僕らから逃げ続けるので、なかなか撮らせてもらえない。顔を水面に出すと、すぐ目の前を泳いでいるように見えるが、透明度のせいもあり、水中ではぼや~っと見える状態で追尾する状況がしばらく続いた。このとき、6頭までクジラがいるのを確認した。ボートに上がってから、皆で握手をして喜んだ。デイビッドは、「こんな事は去年はまったくなかった」と言っていたし、毛塚さんも「写真はうまく撮れなくても、メイティングポットに入れただけで満足です」と興奮していた。
オンゴはこの日も、なかなかクジラに会えていなかったホエールソングを無線で呼んでいたのでしばらくはこのメイティングポッドを2隻で追尾していた。こちらはしばらく様子を見ていて、あちらには何度か入水するチャンスがあったにもかかわらず、クジラの数と迫力に圧倒されているのか、ゲストが入ろうとしない。僕らは、しばらくゆっくり追尾を続けながらボートの上でランチを食べ、その後ふたたび同じポッドBを追跡。うまく前に回り込んで、群れがボートに向かってきたタイミングでエントリーすると、向きを変えて逃げ始めた。毛塚さんが数えたかぎりでは、8頭以上いたらしい。撮影は何カットか成功。しかもベタ凪ぎだったので、水面にクジラが写っていた。
追跡している時に、何度かクジラがボートに接近しすぎた時があったのだが、数頭がボートに向かってきて、目前で潜行、ギリギリでテールがボートに接触せずに潜っていった時にはさすがに皆で「わ~お!」と大声を上げて興奮しながら見守ってしまった。ほんの数秒タイミングが遅ければテールがボートにぶつかっていただろうっていうくらいだった。結局入水は2回程で終了したが、メーティングポッドに入れただけで十分満足だった。
その後、若い母親と子を追跡するが、寄らせてもらえない。オンゴがボートのエンジンを切ってみた。しかし、シャイな親子は移動を続けた。この親子に接近するのは難しいと判断。彼らが泳ぎ去った後、エンジンをかけようとしたが、まったくかからない。どうやらバッテリー切れのようだ。しょうがないのでホエールソングに救助の無線を入れるが、すでに帰路についていて、ここまで戻ってきた場合、フルークはともかく、船足の遅いホエールソングは日没までに港に戻れなくなってしまう。別のボートに救助を求めたところ、スピードの速いホエールウォッチババウのボートが救助に来てくれた。予備のバッテリーと交換してもらい、帰路についた。
戻ってから、まだ体調が完全でない毛塚さんは部屋で休んでいたが、僕とオンゴとデイビッドはマーメイド(バー)で軽く乾杯をした。そこで聞いた話だが、オンゴは18年間、ホエールウォッチングのガイドをしている。彼の経験から言うと、海が荒れると西側(深い海)にクジラが集まり、海が穏やかな時は東側、あるいは南側の浅いリーフにクジラが集まるという。荒れているときに、浅いリーフの多い場所にいると、泳ぎの下手な子クジラなど、リーフにぶつかってしまうのではということらしい。彼のクジラの探し方には、そういう経験からか、一貫性があり、クジラの個体によって泳げるか泳げないかの判断も思いきりが良い。何より遠くからブローを見つけるのがとても早い。
今まで多くのカメラマンが来たが、ほとんどの人が彼に「あちらに行け、こちらに行け」と命令するだけで、彼はほとんどドライバーとしての役をこなすだけだったそうだ。しかし、僕は彼の長年の経験、勘といったものを生かす方が最善だと思う。僕に言わせれば、今までの遭遇率から言っても、オンゴは尊敬に値する最高のホエールガイドだ。彼の「今でも毎日クジラの事を学び続けている」という言葉にも感動した。しかし、頑固なところもあって、一度来て、気に入らないカメラマンとかだと、2度目に来た時には絶対その人のためにスキッパーはしない。そんな彼に「お前なら来年来ても、俺が毎日スキッパーをやるよ。それに家族も連れて来い」と言ってくれたのは嬉しかった。

RecentEntry

  • カテゴリーなし