INTOTHEBLUE 水中写真家  越智隆治

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トンガ ホエールスイム

2004年トンガでのクジラ水中撮影1 セーリングサファリ

2004.08.15 / Author.


トンガ滞在1週間目。昨日の天気がウソのような快晴。風もほとんど無い。10時にセーリングサファリのフルークに乗船してクジラを探す。

先週まで乗っていたヨットのメリンダ号と違い、スピードがあり、小回りが効くので、プロの撮影に使うのはうってつけのボートだ。しかし、本来はウォッチングにこのボートは使わない。あくまでセーリングサファリのオーナーが懇意にしているプロにだけチャーターさせている船だ。最初は西側の外洋。やはりいつもこちら側の方が透明度が高いそうで、ボート上から見ても透明度が高いのが分かった。Hung島沖でペア2組、シングル1頭を目撃するが、すぐに潜ってしまったので別の個体を探すことに。Foeata島南側でシングル、親子を発見するも、これもすぐに潜ってしまった。Ava Pulepulekai(海峡)でもシングル1頭。しかし駄目。
先週妊娠クジラたちがいた方に向かうと何隻かのウォッチングボートが見えた。皆探すのに苦労しているようだ。トンガ人スキッパーのオンゴが「島の内側に(同じセイリングサファリのホエールウォッチグボートの)ホエールソングもいる」というので、そちらの方に行ってみた。
Oto島とAva島の間でクジラのブローを発見。しかし、すでにホエールソングがついていて、ゲストを泳がせていた。無線で確認したところ、どうやら親子らしい。一緒に泳げそうだというので、僕らは西の外洋への出口付近で別のクジラを探しながらホエールソングのゲスト20人が全員入るまで待つ事にした。ここでは、一度に入水できるのは4人までというルールだから、20人だと5回交代しなければいけない。20人が全員泳げるくらいフレンドリーなのかと、半ば疑いながら、遠くに見えるホエールソングを見守っていた。1時間くらいたってから、何やら無線でやり取りしていたオンゴが「ウエットスーツを着て泳ぐ準備をしろ」と言う。それでも「こんなに時間たったら、もうクジラ逃げてるんじゃないの」と半信半疑のまま、急いでウエットを着て水中カメラのセットをする。ゆっくりと、少しづつ近付いて行くと、水面にプカプカ浮いている大きなザトウクジラの背中が見えてきた。「あれだけ人が入ったのに、同じ場所で浮いてるよ」。毛塚さんと僕は信じられないという気持ちでその親子の背中を眺めていた。「お~」という毛塚さんの感嘆の声は心なしか震えていた。
ボートを近付けて、ゆっくり入水。僕はNikonos RS+13mmのストラップをタスキがけにし、手にはSEA&SEA NX-100+17~35mmレンズを持って、同じく2台のカメラを持つ毛塚さんと二人並んで、ゆっくり、ゆっくり接近を試みた。内湾なので、透明度はそれほど良くない。それでも15m程。最初に母親の全容が見えて来た。と、よく見ると、母クジラの頭の上に、子クジラがこちらにテールを向けてチョコンとのっかっている(親子B`、 No7,8)。まさにちょこんって感じだ。「す、すげえ!」心の中で叫びながら毛塚さんの方を見た。毛塚さんも目を丸くして、僕と目を合わせた。静かながら、気持が興奮しているのが表情から読み取れた。お互い、クジラに向き直り、撮影を始めた。
水面に浮いたままで、適度に距離を取っているからか、まったく逃げる様子が無い。母親と子供の視線をひしひしと感じる距離。完全に目があっている。こちらを見てる。優しいが、しかし強烈に印象に残る目だ。しばらくして、二人で水面に顔を出し「ちょっと潜ってみましょうか?」と言って、静かに潜ると、嫌なのか、母親が大きく体を反らして、移動を始めた。「しまった、やっぱり水面で我慢してれば良かった」と一瞬思ったが、親子クジラはしばらく水面から姿を消した。
本当なら、こんな状況に遭遇したら、2台のカメラを一気に撮りきってしまいそうだが、何故か毛塚さんも僕も、全て撮りきる事ができなかった。あまりに近くに、まったく動かずにじっとしている母子に二人とも見とれてしまったのだ。
一度ボートに戻ったのだが、フィルムを入れ替えている間に、また親子は目の前に浮上してきた。どうやらこの島々に囲まれた場所が生まれたばかりの子供のためには安全なのかもしれない。再度、二人で入水。先ほどよりも冷静になった二人は、同時に大胆にもなっていったので、撮影のためにますます接近していった。しかし、あまり近寄り過ぎると、母親が長い胸びれを静かに動かして、「それ以上近付かないでね、赤ちゃんが驚くから」といった風に、フィッシュアイのファインダーを覗き続けて、距離感覚の麻痺している僕らに注意を促す。
しばらくして再度、二人で確認しあって潜るが、やはり移動してしまう。しかし、またほとんど同じ場所に浮上してくるのだ。結局1時間30分ほど一緒に泳ぎ、フィルムも2台合わせて8本程使用した。途中で別のヨットの人たちが入ってきた(実際には、ホエールスイミングのパーミッションを持っていないので、入ってはいけないのだが...)が、僕らの後ろで見ているので、気にせず、水中で手を振って挨拶した。
しばらくして、ホエールソングがまた近付いて来たので、交代して別のクジラを探す事にした。それにしても、母子クジラがあんなにのんびりしているところを撮れるなんて感動した。毛塚さんは「もう今日だけで十分です」と言っていたが、まだまだ先は長い。
その後1頭のシングル(No9)に水中でトライ。しかし、移動しているので、2~3カット撮影しただけだった。結局それでこの日は終了。港に引き上げた。今日の親子クジラとの遭遇は、今までのザトウクジラのシャイな印象を大きく変える出来事だった。本当に感動した1日だった。

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